発酵寸前?ゴミ箱に消えていったボツネタ特集。
では始めに、真紅の鎌ボツネタ編。
昌平は最初女性キャラで、ジャニスは最初こんな壊れたキャラだったという(笑)
まあ、ボツになるわなぁ………。
その死体は全身を細かい切り傷に覆われ、元は作業服であったと思われるボロをまとっていた。
その胸は半ばまで切り裂かれており、見た限り………これが致命傷であろうと思われる。
「酷いな」
オレはズタズタに切り刻まれた死体を見ながら思わず呟いていた。
オレが、その何か『鋭利な物』で切り刻まれた死体を前に立っていると、横から声がかけられた。
「………これが私達に下された『罰』なのでしょうか?」
恐らく依頼主の一族の者だろう。歳は20代半ば。なかなか綺麗な女性である。
だが、その顔は苦渋に満ちていた。
まあ、無理もないだろう。自分達のミスでこんな事になったのだ。
「そうともいえんさ。こいつらには少なくとも罪はなかったはずだ。
いうならば………『やつら』の勝手な理論で殺されたってことだ」
オレの言葉に、眉をひそめながらもその女性はいう。
「しかし、古来からの盟約を破ったのは………」
「盟約ねぇ。単に『やつら』が勝手に侵入者を殺してただけだろ?
殺されないために、人間はその谷を『忌み地』として決して入ってはいけない場所としたんだ。
そうして唯一の交渉役『風守』の一族が生まれた。あいつらの方こそ、人間を利用していたんだ」
「しかし………」
「そう考えることもできるって話しさ。つまりパワーゲームなんだ。強い方の言い分だけが通る。
それなら、おれ達にも言い分はある。やつらの暴走は目に余るってな」
「では………」
「ああ。とりあえず依頼を受けたしな。もっとも………オレの流儀は聞いてるかい?」
「はい………皆殺し、と」
「そうだ。オレは化け物専門の殺し屋、皆殺し専門の『来須 狩夜』だ」
オレの物騒な自己紹介にひるむ事なく、その女性は名乗る。
「当代の風守の『風守 彩花(かざもり あやか)』です。詳しい話しは屋敷の方で………」
オレは『不幸な事故』のあった工事現場から、その女性の案内で風守家の屋敷に向かう。
ここは加瀬谷村。地元では『風谷村』と呼ばれるらしい。
この地方特有の切り立った谷と、その谷に年中吹く風。ここはそんな一年中風の強い地域だ。
事故のあった加瀬谷は、この地域の名前の由来になったのが分るくらい美しい場所だった。
しかし、この村も最近になって急速に開発が進み、何も知らない住人が増えてきた。
なんでも薬品工場を始め、色々な観光施設をその谷に作るのだそうだ。
美しい谷と、そこに流れる綺麗な水が目玉商品ってトコロだろうな。
そうやって人が入ってくるのを、嫌がるモノがいるのも知らずにな………。
加瀬谷は………この村でも一際、風の強い谷だったのだ。
そこで作業を行っていた現場監督は、『かまいたち』という自然現象によって全身を切り刻まれた。
少なくともそうとしか考えられないだろうな。一般人には。
だが、それは大きな間違いだ。
そういった自然現象を起こすのは力の弱いやつだ。大物はこんな風に………切り裂く。
厄介な相手だ。しかも………何匹あつまればあんなマネが出来るのか想像もできねぇ。
今回ばかりは手助けってヤツがいるかもしれない。
案内された屋敷は随分と年季の入った建物だった。
「では、客間に案内します」
「その前に電話を借りたいんだが………」
オレの携帯は役にたたない。理由は………圏外だからさ。
「では、こちらに」
オレは荷物を玄関に放って、電話をかけた。多分、あいつもまだ日本にいるはずだ。
まずは、組織の中継点に連絡する。あいつにこっちに電話をかけてくるように伝えてもらうためだ。
「今日か明日にでもオレに電話があると思う」
おれはそう告げると、客間に向かう。
この村には旅館もあるが、都合上この家に厄介になる事にした。ここなら情報収集にはうってつけだろう。
今回は獲物も目的もえらくはっきりしている。
獲物は『カマイタチ』。鎌鼬とも書く。風に乗って風よりも早く飛びまわる化け物だ。
その姿を目にした者が、はたしているのだろうか?
やつらはイタチなんて名づけられているが、イタチなんかではない。形容がしようもない。
しいて言えばイタチに近いかもしれない。
だが、その体から生えた鎌を見れば、それが尋常でない生物………化け物だと思えるだろう。
しかも人の姿に化けられる。………本性をあらわせば風より早く動く一個の凶器だ。
この谷はそんな化け物どもの巣なのだ。
オレへの依頼はその谷に潜む大物の駆除。
ザコの数は数知れず。気を抜けば駆除されるのはこっちの方だ。
………あたらめて今回の仕事の困難さを思い知らされる思いだった。
そうして、オレは懐から銃を抜く。
『こんなものが果たして通用するのか?』
どんな武器も当たらなければ意味が無い。
視覚に捕らえることの困難な相手に、銃は通用するのだろうか?
まあ、そのために『あいつ』を呼ぼうとしているのだが………。
その時、電話が鳴る。早いな。
「………来須さん。たぶん女性の方から電話です」
彩花さんはそう告げると去って行った。呆れているな。まあ、しょうがないだろう。
オレは保留状態のままになっていた電話を手にとると、相手を確認もしないで用件を告げた。
「オレだ。手を貸してくれ」
『また随分とクソッタレな申し出だなぁ。アンタらしくもねぇ。それにいいのかぁ?
自分の手で殺さないと気が済まないくせによぉ?』
その声は女性のものだが、口調はそれっぽくない。それに、声は悪意に満ちている上に巻き舌。
普通なら喧嘩を売っているようにしか感じられないだろう。
だが、こいつは、これでも普通に話しているつもりなんだから質が悪い。
「一人では手に負えないかもしれん」
『へぇ………どれくらい危険なんだぁ?』
「敵の巣に入り込んで、大物退治。ザコは無数。動きは風より速い。失敗すれば細切れになる………どうだ?」
『ヒャッハー!面白そうだねぇ!殺し放題かよぉ………嬉しいねぇ〜』
その声は期待に震えている。こいつは血を見るのが大好きという困った性格をしている。
『もう研究資金が底をついてたんだぁ。で?いくら払うんだぃ?』
「言い値を出してやる」
そして、金にも汚い。
「場所はな………」
どうやら手伝ってくれそうだ。性格面にかなり厄介なものがあるが、能力だけは申し分ない。
電話の相手は『ジャニス』。本名は知らない。イカレタ錬金術士ってやつだ。
その研究には金がかかるらしい。
それでこうやって時々、オレみたいな人間と手を組んでアルバイトってわけだ。
オレからして見れば、下らない研究よりも、その卓越した魔術を他にいかせばいいと思えるのだが………。
その魔術の才能を、自分でわかっているのだろうか?
「後、幾つか言っておく。ボスはオレだ。命令に従わないときは、問答無用で撃つぜ?」
『ヒャッハー!!あんたのそーゆートコが好きなんだぜぇ!』
「あとは………普通の格好で来い」
『じゃあ、ガイコツも杖もマントもなしかぃ?』
「当たり前だ」
『ピーちゃんはぁ?』
ピーちゃんとかいうのは、あいつの使い魔………オレも見た事ないくらいに不恰好な奇妙な生物だ。
鳥でもネコでも犬でもない、何か………。当てはまる言葉がないくらいに奇妙な生物だ。
「鳥かネコでないなら連れてくるな。あんな訳のわかんねー生き物は禁止だ」
『BooBoo』
「なんでもいいから早く来い!」
オレは思わず怒鳴りつけると、乱暴に電話を切った。
………つまり、こんなヤツだ。アイツ相手では、オレのペースも狂いっぱなしだ。
オレはタメ息混じりに部屋に戻ると、そのまま横になった。
今回はあいつの魔術が頼りだ。しかし………あいつを呼んで無事に済んだためしがない。
オレは底知れない不安を胸に、初日の調査を終えたのだった。
カチャッ。
その馴染み深い音と同時に飛び起きながら、枕の下に隠しておいたはずの銃を探す。………ない。
「無用心だぜぇ、ボスぅ?」
その悪意100%な声と共に、オレは朝っぱらから頭痛を感じていた。
「ジャニス………なんだ?その格好は?」
ジャニスは何故かピンクのスーツ姿だった。
まあ、それはいいとしよう。だが、シャツやベルトまでピンクとは………何を考えているんだ?
そんな全身ピンク色の痩せた女が、オレの銃を目の前で構えていた。
その指を彩るマニキュアも当然、ピンク。徹底してやがる。
ジャニスは180を超える長身で、かなり痩せている。
髪は銀色………のはずなのだが、今はなせかピンクに染めていやがる。
目は金色でネコのように縦に瞳孔が開いている。俗に言う蛇眼(邪眼)ってやつのはずなのだが………。
やっぱりカラーコンタクトをしている。色は………いうまでもないだろ?
だがいくらコンタクトで隠そうと、その瞳の異様さは隠しきれるはずもない。
「へっへー、いいだろぉ?特別に作ったんだぜぇ!」
その声は無邪気で、顔は喜びをあらわすように満面の笑顔だ。
まあ、口調さえどうにかすれば、それなりに良い女なんだがな………。
「まずはサングラスをしろ」
オレは注意と同時にジャニスから銃を取り上げる。
おれが銃を取り上げると、ジャニスは懐から薄いピンク色のレンスのメガネを取り出すと身につけた。
「で?朝っぱらから、どうゆう了見だ?」
「いいじゃねーかよぁ、油断してねーかどうかテストしてやったんだからよぉ」
「まあいい。だが………話しを聞きに行く前に注意しておく。黙っていろ」
「はいはい。いつものとーりにすればいいんだろぅ」
ジャニスは肩をすくめると、ため息混じりに答えた。
こんなヤツが、オレの知る限りでのフリーランスの魔術師では最強クラスだっていうんだから世の中はわからない。
まあ、こいつの知識と魔術が役に立つ事も多いのは確かだ。
オレは銃を懐にしまって、着替えを済ませるとジャニスを伴って彩花さんに話しを聞きにいった。
「紹介する。こいつが今回一緒に仕事にあたるジャニスだ」
「風守 彩花です。当代の風守です」
「なあ、風守ってのは、何をするもんなんだぁ?」
いきなり注意を忘れたのか?コイツは?まあ、それを説明する時間もなかったからな。
「風守というのは………谷のモノと人間の仲介役です。主に境界線について話をするのが仕事です」
「他にもあるんじゃないかぁ?」
「はい。風を弱める神事を谷で行う事があります」
「ほー………。風守の神事ねー………聞いた事あるぜぇ」
「御存知でしたか?」
「聞いた事ある程度だけどなぁ。でもよぉ、なんでこの辺だけコンナに風がツエーんだろうなぁ?」
「谷にはカマイタチのほかにも………何か居るんじゃないか?」
「………わかりません。もうそういった記録が残ってないんです」
「残ってない?」
「………はい。私の代になるまで数十年間、風守がいなかったんです。
それで、その間に記録なども紛失してしまったらしく………」
ここまででこのキャラでやる事を諦めたという代物です。
さて、次は………といっても最後ですが(笑)、外法兵器の初期バージョン。
最初は新人研修という名がついておりました。
オレは照明で明るく照られた窓のない廊下を歩きながら、最後の抵抗を試みていた。
「なあ、本当はお前だけでも十分なんじゃないのか?」
「私だけじゃ黒魔法は仕込めても、白魔術が仕込めないだろう?」
「大体、なんでお前がこんなトコロで『新人教育』なんてやってるんだ?」
「今回の不祥事の原因は私だからねぇ。その代償さ」
「まさかこうなると分っていて、あんなマネをしたんじゃないだろうな?」
「そんな訳ないだろう?偶然だよ。原因を作ったのは私だけどねぇ」
オレは前回の仕事の最後で、この性悪魔女のイタズラによって組織の手助けを借りる羽目になったのだ。
こんな似合いもしない仕事を手伝う羽目になったのも、全て自称『相棒』のせいだ。
その相棒は、オレの横でいつものように派手なスーツを着て笑みを浮かべている。
「お前もオレの相棒を名乗るなら、少しはオレのために何かしようって気はないのか?」
「フフフ………そうくると思って新人のデータだけは入手してあるんだ」
「それで、オレはどんなヒヨッコを任されたんだ?」
「ヒヨッコどもさ。
一人はスナイパータイプ。それ以外に適性はなかったよ。アンタとは違ったタイプだねぇ。
もう一人は格闘のエキスパートさ。特に接近戦ではアンタでも勝てないだろうねぇ」
「えらくアンバランスな新人どもだな」
「フフフ………驚くよぉ?会ったらさ」
こいつは新人に面識がある。というのも、新人の魔法習得の基礎訓練の教官だったせいだ。
しかし、オレにこれ以上は新人の情報を教える気はないようだ。
その顔をみたオレは早々に諦めた。
自称相棒のジャニスという魔女は、こうと決めたらテコでも自分のやり方を変えないヤツなのだ。
オレは、そんな厄介な自称相棒にまとわりつかれる不幸なハンター『来須 狩夜』。
そうして、オレの目の前に迫った一室にはオレが教育を手伝う事になった新人どもがいるらしい。
オレの今回の任務は………その新人の教育のサポートなのだ。
オレは部屋に入るなり妖気を感じた。
とっさに銃を抜くと、部屋の中に飛び込んで、妖気の発生源に銃を向ける。
そこには、サングラスをかけた全身黒ずくめの青年の姿をした『化け物』が座っていた。
それを見たオレは、ためらいも無く弾丸を打ちこもうとする。
………だが、銃弾が発射されることはなかった。
そいつは瞬間的にオレの目の前に移動すると、オレの銃の撃鉄を押さえていたのだ。
リボルバータイプの銃の的確な封じ方だ。撃鉄を押さえられては、どうやっても撃てない。
だが、この動きの速さ………まさか………。
「まさか………二郎か?」
「久しいな。挨拶はすでにジャニス殿にしておいた筈なのだがな………。これは何のつもりだ?」
これが、ジャニスの言っていた接近戦のエキスパートか。違いない。一対一の接近戦なら無敵だろう。
こいつは、加瀬谷の事件で唯一生き残った最後の化け物。カマイタチと呼ばれる化け物なのだ。
その動きは、なんの準備もしていない人間にどうにか出来る代物ではない。
「キ、キリト!何してんだよ!」
オレの背後で少年の声がする。
「キリト?」
「オレの新しい名だ。今は『風守 切人』と名乗っている。キリトとでも呼んでくれ」
風守………もしや………。
「昌平か?」
「お久しぶりです、来須さん」
予想通り、オレの背後にいたのは加瀬谷の事件でジャニスにスカウトされていた『風守 昌平』だった。
「お前………本当に組織に入ったのか?」
「はい。基礎訓練過程を終えて帰ってきたばかりです」
「………何がどうなったら、二郎と一緒にここにいる事になるんだ?」
「キリトは我が風守一族の『盟友』になったんです」
「盟友?」
「はい、今はもう『大鎌の二郎』ではなく『風守 切人』(かざもり きりと)と名乗っています。
彼らが、人と共存できるようになるその日まで………私達と彼は共に生きる事にしたんです」
「共に生きる………か」
オレは目の前にいるキリトに向かって問いかける。
「お前、死に損なったのか?それとも、命を惜しんだのか?」
「色々あったんだ。あれからな。
もう人は殺さないから心配無用だ。それに………死んでしまっては罪滅ぼしもできない。
今はもっぱら昌平への恩返し中ってトコロだ」
そういってキリトは薄く笑った。オレはコイツが笑った顔を見るのは始めてだった。
何があったかは知らないが、随分と雰囲気が変わったな………。
「そろそろ本題に入ったらどうだい?」
ジャニスの面白がっている声を聞いて、オレは銃を手放した。
キリトは、手馴れた風に銃から弾を抜き取ると、オレに返した。
用心深いやつだ。厄介なヤツに、厄介な知識がプラスされたものだな………。
昌平はスナイパータイプと聞いていた。確かに遠距離射撃の腕だけはかなりのものだった。
「お前は不思議なヤツだな。近距離射撃はダメなくせに遠距離射撃になった途端に成績がよくなる。
あるいは………風の力でも持っているかもしれんな」
「風の力?」
何百年も加瀬谷で代を重ねてきた霊能力者の末裔なのだ。風に関係する能力を持っていても不思議は無い。
おそらく風を無意識の内に読みとって、それを踏まえた上で撃っているんだろう。
「………よくわかりません」
「まあ、才能だと思っておくといい」
オレの分りにくい説明にキリトが口を挟んでくる。
「伊達に長年オレ達を封じてきた者の末裔ではないということか?」
「そういう事だ。ところでキリト………お前は射撃は全然ダメだな」
キリトの方は、的に当たってる方が珍しいって感じの成績だ。適性は最低ランク以下だった。
「無理を言うな。大体、オレにはこれがある」
そういってキリトは手の平から鎌を伸ばした。………まあ、カマイタチだしな。
獣の本能と誇りをどうにかしろってのは、ムリな話しなのだろう。
「まあ、お前はそれでいいか………。
それより、昌平。お前に接近戦用の射撃の心得ってのを教えてやる。
お前は銃を狙いすぎる傾向がある。
お前の接近戦用の銃はフルオートで撃てるタイプの銃なんだ、その特性を最大限に利用しろ」
オレはそういって軽機関銃を構えた昌平の姿勢をどんどん変えていく。
「今は腕だけで撃っているが、そうではなく腰で狙うんだ。
銃を腰の横で構えろ。腕は銃の反動を押さえつけるためだけに使え。
なぎ払う感じで、着弾点をばらけさせるんだ」
オレの簡単なレクチャーを聞いて、昌平は今までの構えを捨てたようだ。
「………こんな感じですか?」
「そう、そんな感じだ。もっと、膝を曲げろ………それでいい。姿勢はなるべく低くしろ。
後、狙いはなるべく下側がいい。出来れば腰から下を撃って相手の動きを封じろ。
そうすれば………後は簡単だ」
「教習所仕込の構えが、いつのまにか傭兵みたいな構えになってるよ?」
「まあな、 オレの知っている中では、接近戦ではこれが最も有利な姿勢なんだ。
命中率なんて接近戦じゃ役には立たない。生き残った方が勝者なんだからな。
姿勢がどんなにへっぴり腰になってもいい。生き残るにはそれが有利なんだ。
生き残りながら相手に向かって銃を撃っていれば………いつかは勝てる」
極論だが、それが真理だ。
「あとな………建物の中で戦う時は、遮蔽物はいいが壁には近寄るな。
通路では壁からの跳弾が一番怖いんだ。予測できない場所から飛んでくるからな。
怖いだろうが、通路では真ん中が一番安全なんだ。真ん中を駆けぬけろ」
オレは昌平にも出来るであろう即席の射撃術を、次々に教えこんでいった。
「何か質問は?」
「フルオートだと何秒かで弾切れになります。その時にはどうすればいいんでしょうか?」
「なんのための予備マガジンだ?気にせずドンドン使え。ただし、交換は迅速にな。
マガジンの交換に二秒以上かかったら、死ぬと思え。
あと、予備マガジンの本数は常に把握しておけ。使い方の配分は自分でコントロールするんだ。
戦場の動きに惑わされるな。自分を見失ったら肝心な時に弾切れを起こすぞ。
………他に質問は?」
「じゃあ………来須さんはなんでいつもリボルバーなんですか?」
「オレはお前とは違うタイプだからな。お前が手数で押さえこむのと違って、オレは一点集中タイプだ。
むしろ一発で決めるのに全力をかける様な撃ち方しかしないんだ」
それを聞いても昌平は困惑顔をしたままだった。そうやら分っていないようだな。
「ここは実演といこうか………。あそこの壁の裏に敵がいるとする。お前ならどうやって仕留める?」
「オレなら………相手が顔を出したところを狙って撃ちます」
「まあ、そうだろう。だが、オレは………」
そういってオレは精神力を込めた弾丸を、一発だけ撃ちこむ。
その弾丸はまるで粘土の壁を突き破るように、厚さ数センチのコンクリートの壁を貫通した。
「………とまあ、こういった芸当が出来る。これがお前とオレのタイプと能力の違いだ」
「これがハンターの力さ。勉強になっただろう?」
そこにキリトが割りこんできた。
「オレならこうする」
今まで無視されたのが癪にさわったのか、キリトが左手の鎌で壁を切り裂いた。
「………お前は例外だ。銃を使ってやる場合の話しだ」
そう苦笑混じりに答えたオレに、昌平は落ち込んだ声で答えた。
「なんにせよ………接近戦は向いてないってよく分りました」
「まあまあ、アンタにはアンタにしか出来ない戦い方ってのがあるさ」
それを悟らせたかったのか?ジャニスも案外良い先生をやっているんだな。
力の差を見せつけられて落ちこむ昌平に、言葉をかけて慰めるジャニスを見ながら、オレはそう感じていた。
やはりここまででこの設定でやる事を諦めたと訳です。
しかし、この話しの最初の部分が下地になって千の顔を持つ男の基本プロットは出来上がっていきました。
何がどう転ぶかは本人にも分りませんね(笑)