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オレが首尾良く武器を調達してJBを探している時。 どこからか小さい銃声が響いてきた。 「JBか。 ・・・どこにいる?」 オレは周囲を見渡すが、音の発信源は特定出来ない。 そして、その音が通気口から聞こえているのに気付いたオレは、最悪の事態が起こった事を知った。 「くそ! 見つかったか!」 それは確信に似た感覚だった。 JBがこれほど銃を撃たなければ殺せない人物など、この施設には自分を除いてたった一人しか居ない。 それは、自分に匹敵する戦闘力を持った人物。 フレデリックだけだった。 オレは、急いで罠を張ってあるフロアに向かう。 そこはこの施設の薬品倉庫の一角にあるさほど広くない倉庫だ。 だが、その途中。 オレはフレデリックの着ていた戦闘服をまとった死体を目にしてしまう。 それを見て動揺したのが運のツキだったのかも知れない。 オレは背後に立つ、JBの存在に気付くのが遅れた。 背中に押し当てられた銃は、間違い無く心臓を狙っていた。 いくら人の規格から外れた存在であるハンターと言っても、心臓や脳を破壊されては生きてなどいられない。 「・・・ホールドアップ」 それにオレは従うしかなかった。 オレは手に持った魔物の爪を加工した短剣を床に放り投げると両手を頭の後ろで組んだ。 これは罠だったのだろうか? 「えらく姑息な手を使うな。 JB」 「オレはフレデリックと戦っただけだ。 そこにお前がやってきたのは単なる偶然だ」 「あれはフレデリック師のものか?」 「残念だが、違う。 あいつは戦闘の天才だとか言われているが、オレに言わせれば奇術師か詐欺師だな。 見事に騙されたぜ」 「・・・では、まだ生きているって事だな」 「ああ。 お前は先に行っていろ。 すぐに後を追わせてやるぜ」 それを聞いて、オレはJBがなぜいつまでもここに留まるのか、それをようやく理解できた。 JBクラスの戦闘者ならこの程度の施設から逃げ出すのはそう難しい話しじゃない。 手段を選ばなければ、もうとうの昔にここから逃げ出せているはずなのだ。 だが、JBはそうしなかった。 なぜか? それは、自分がここにいる限り、施設の緊急閉鎖は解除されなからだ。 それは中にいるJBを逃がさないためでもある。 JBは脱走したのではない。 ハナからこれが狙いだったのだ。 JBの狙いは、さっきの言葉からしてフレデリックを殺す事だと思われる。 だから、いつまでもここに留まっているのだ。 JBは自分が逃げ出したと思わせて、この施設からフレデリックが外に出られないようにしたのだ。 そう考えれば、JBが『愛用の銃を所持したまま脱走した』というおかしな点も納得できる。 こいつはここに実験体として潜り込んだのだ。 しかも武装したまま、今日まですっとある場所に留まっていた。 それは大幹部の研究施設だった。 全ての事実はたった一つの事を指している。 これは、計画的な暗殺だ。 それを事故に見せかける為に、JBは脱走してみせたのだ。 「そうか。 お前は脱走したい訳じゃないんだな。 ハナから彼を殺すことが目的だった。 違うか?」 「・・・テメエみたいな若造相手に墓穴を掘るなんざ、オレもいよいよ焼きが回ったな」 「なぜだ?」 「簡単な話しだ。 あいつを殺したがってるヤツがいる、 オレは依頼を受けてそれを果そうとしているだけだ。 お前だって知っているはずだ。 組織の仕事は魔物を殺すことだけじゃない。 むしろ暗殺などが多くを占めているんだ。 組織にとって、魔物相手の仕事なんぞ、割の悪い仕事でしかない。 暗殺は組織にとって一番の収入源になっているんだからな」 「だが、今回は話しが違う。 お前は組織の大幹部を狙っている。 これは外からの依頼なんかじゃない」 依頼者は、おそらく大幹部の一人。 おそらくフレデリックの首領就任を阻むためだろう。 「依頼者は大方、大幹部の誰かだろうが・・・少なくともお前のいた場所の持ち主なんかじゃない。 誰に頼まれたんだ?」 JBのいた研究施設の持ち主を疑う訳にはいかないのだ。 第一、疑うには根拠が弱過ぎる。 これが計画的なものなら、その大幹部の研究施設にわざと潜り込んだとも考えられるからだ。 それはカモフラージュかも知れないのだ。 第一、JBが脱走した結果、フレデリックが殺されたとなれば、一番に疑われるのはJBがいた施設の所有者以外にいないんだからな。 仮にも大幹部クラスの人間が考案した作戦なら、そんな致命的なミスを犯すはずがない。 それだと、JBが武器もっている理由にはならないかも知れないが、やり方ってのは色々あるものだ。 武器なんぞ、その気なれば研究施設から脱走後に、手に入れる方法など幾らでもある。 これだけ広い施設なら隠し場所には困らないだろうしな。 それに脱走前に入手する方法もある。 例えば、内通者。 スパイの類の研究員が一人でもいれば、事は足りるだろう。 「意外と頭が良いな。 命令を忠実にこなす事だけが取り柄のヤツとは一味違うらしい。 だが、依頼人の秘密を話す訳にはいかないんでな」 「だろうな。 それが暗殺者の最低限のモラルだからな」 「モラルか。 クソッタレだな」 「そうだな。 クソッタレな言葉だ」 そう言うと、オレは袖に仕込んでいた短剣を抜き打ちにするように降り回していた。 降り回す事は、そのまま銃の狙いを外すことにもつながる。 案の定、JBの撃った銃弾はオレの心臓を大きく外れ、肩を貫通するに留まった。 そして、オレの短剣は、ヤツの腕を切り飛ばしていた。 これには自分でも驚いた。 この爪に宿った怨念は、とてつもなく強いものだったのかも知れない。 「やりやがったな! 若造!」 オレは、その言葉を聞きながら、その場から逃げ出していた。 JBは切られた腕を拾わなければならないので、オレについてこれない。 だが、オレを追って来たのはJBではなく、銃弾だった。 だが、片手になっただけに先ほどまでの連射性能はなかった。 それをなんとか致命傷にならないようにかわしながらも、オレはフレデリックの待つある場所に向かっていた。 JBがフレデリックを狙っているなら、オレはその目的の一番の障害となりうる。 しかも、ヤツにとって脅威となる短剣も持っていた。 多分、ヤツはオレを追ってくる。 これは確信に近い予感だった。 そして、ヤツはオレを追って来た。 オレは指定さえたフロアの部屋に入るなり、その薬品タンクの並んだ倉庫の中央にぶら下がった滑車に飛びつくと、そこにあるスイッチを入れた。 すると、その滑車は勢いよく倉庫の奥に向かって滑り出していく。 そこに数十秒遅れてJBが駆けこんで来た。 その頃には、オレはもう倉庫の奥深くに入り込んでいた。 この滑車はやたら早い。 このまま壁に激突しないだろうかと心配していると・・・。 ドスン。 オレはものの見事に壁にたたきつけられていた。 しかもその反動でオレは埃だらけの床に転がって、真っ白になってしまった。 くそ! フレデリックの作戦ってのは、そういった細かいところが置き去りにされるから・・・。 「ハッハッハ、若造。 そんな玩具で遊ぶ余裕があるとはな」 オレのそんな醜態を笑っていたJBに、その声はかけられた。 『それなら、ついでに仲良く水浴びでもしてくれたまえ』 そのマイクを通してかけられた声はフレデリックのものだった。 どうやら、どこからかこの部屋をモニターしているらしい。 その声とともに、倉庫のスプリンクラーが一斉に作動して、JBを濡らしていく。 その人工の雨はオレには届かない。 倉庫の奥にあるここには二階ヘと続く階段があるせいでスプリンクラーの水も届かないのだ。 「こんなものでオレの視界を奪えるとでも思っているのか?」 そうあざけるように言うJBに対して、フレデリックの声はさらに告げた。 『JB。 キミは私に言ったね? 自分が無敵の存在だとでも思っているのか?とな。 覚えているな?』 「ああ。 あの時は見事に騙されたぜ。 アンタなら奇術師でも食って行けるぜ?」 『今度は私がキミに聞かせてもらおう。 キミは自分が無敵の存在だとでも思っているのかね?』 「当然だ。 オレは不死の生命体。 リジェネレータなんだからな」 『そういった思い上がりが、ヴァチカンのリジェネレータの敗北を招くのだよ』 「なら、お前ならオレを殺せるとでも言うのか?」 『キミはある意味ヴァンパイアにとても近い。 だが、彼らとは決定的に違う点がある』 「お日様が大好きって事か?」 そう笑いながら答えたJBに、フレデリックの声も面白そうに答えた。 『私はキミのそういったジョークが大嫌いなんだ』 「奇遇だな。 オレもテメエのスカしたツラが大嫌いなんだ。 役にも立たない小細工など面白くもなんともない。 さっさと出て来い。 始末してやるぞ、小僧!」 『来須には若造で、私を小僧かね? 口の汚い男だ』 「やかましい! テメエの頼みの綱の若造はもう動けねえ。 テメエの負けなんだよ!!」 『残念だったな。 私の事を奇術師だと言ったのはキミだ。 キミはもう負けているんだよ』 「・・・なんだと?」 『奇術師の技を堪能してくれたまえ』 その時、部屋の天井で小さな爆発が起きる。 それと同時に、部屋の証明が一斉に落ちた。 「な! なんだ!」 一瞬の間に視界が闇に閉ざされたJBがいくら焦っても、もう遅い。 どんな手を使っても、フレデリックの演出したこの奇術・・・罠からはもう逃げられないのだ。 やつはこの部屋に踏み込んで、スプリンクラーが作動した瞬間に、すでに負けていたのだからな。 バチバチバチバチバチバチィ!! そんな青白い閃光に包まれたJBの髪は逆立ち、全身を硬直させた姿で、悲鳴を上げることすら出来ずに立ち尽くす。 闇の中で青白く光る人間などはじめて見た。 普通の人間ならこの一瞬で十分なんだろうが、フレデリックは容赦なかった。 あるいは、殺しても構わないとでも考えているのかも知れない。 それから十秒くらいだろうか。 ようやくJBは高圧電流から開放されて床に倒れ込んだ。 そして、その直後。 部屋の証明は再び点された。 すでにスプリンクラーは止められていた。 「奇術の味はどうだった? JB?」 その問いはオレの真上の階段から聞こえた。 どうやらこの上がこの倉庫の制御室だったらしい。 「・・・死にましたかね?」 そんなオレの問いに、フレデリックは面白くもなさそうに答えた。 「麻痺しているだけだよ。 あと2〜3分で復活する」 そう言うと、階段から身軽に飛び下りると、床で痙攣していたJBに歩み寄る。 本来ならオレもついて行かなければならないのだが、ここにくるまでに受けた傷のせいで身動きが取れなくなっていた。 怪我は治せても、貧血だけはどうにもならない。 さっさと輸血を受けるか、どうかしないと本気で危ないかも知れない。 だが、オレにも警告するくらいの元気は残っていた。 「気をつけて下さい! JBまだ生きているんです!」 「安心したまえ。 彼はまだ動けない。 だが、このままにしておく訳にもいかないんでね」 「どうするつもりなんです?」 「簡単な事だ。 動けなくする」 そういうと、フレデリックはJBの首の後ろを思い切り踏みつけた。 「これで、捕獲は完了だ。 彼はもう二度と動けない」 「殺したんですか?」 「いいや。 裏経絡を突いた。 東洋医学の技は人を生かすことも出来れば、殺すことも出来る。 癒しに使う経絡の数ミリ横に、裏経絡・・・死の経絡があるのは知っていたかね?」 「いいえ。 知りませんでした」 そう言えば、彼は香港出身だった。 あの街なら東洋医学を極めるのは、そう難しい事ではなかったのかも知れない。 「この裏経絡を突かれた者は、二度と首から下が動かなくなる。 直すには違う裏経絡を突く必要がある。 だが・・・どの裏経絡を突かれたかを知るのは私だけだ。 下手に他の経絡を突けばもう元には戻らない。 これで、彼は私に協力せざるえなくなるのさ」 そう言うと、フレデリックはオレに肩を貸してその部屋を後にした。 「医務室に辿りつくまでは起きていてくれよ。 流石にキミを何度も背負って歩くのは御免こうむりたいんでね」 「申し訳ありません」 「構わない。 キミは良くやってくれた。 今後も私のために働いてくれたまえ」 どうせもうJBは動けない。 放っておいても平気なのだろう。 オレはフレデリック師に肩を借りながらも、先ほど受けた仕打ちについて文句を言っていた。 「聞きたいことがあります」 「なんだね?」 「なぜ私が壁に叩きつけられなければならないんですか?」 「済まないな。 あれも演出の一つなんだ」 「演出?」 「ああ。 JBはキミの醜態を見て気が緩んだ。 そこに役に立たないであろう小細工が続く。 彼はきっと私の作戦を、大した事ないと思っただろうね。 現に、そこにはもう戦える人間は残ってなかったんだからな。 だが、そう思わせる事がこっちの狙いなんだ」 「油断させると?」 「侮らせるのさ。 人間は侮った相手に思わぬ逆襲を食らうことがある。 良く言うだろう? 窮鼠猫を噛むとね。 だが、その鼠が狙って窮地に陥り、侮らせたと知ったら・・・猫は随分と悔しがるだろうな」 JBはフレリックの事を侮り、気を抜いてしまった そこに不意打ちで視界を奪い、天井を走っていた高圧線が切断されて降ってくる。 これをJBがかわすには高圧線を銃で撃ちぬくしかない。 床に届いては床を濡らした水を伝って感電してしまうからな。 だが、その視界はスプリンクラーの雨と闇に閉ざされてしまっていた。 これではどうやっても、かわせないだろう。 その罠の事をフレデリックは奇術だと言ったが、それは的を得た言い方だったのかも知れない。 だが、本当に、その作戦の中でオレが壁に叩きつけられなければならない必要はあったのだろうか? そこまで狙っていたというのは、本人の弁だが、それはいわば結果論にすぎない。 今なら何とでも言えるのだからな。 本当にそこまで考えていたのだろうか? オレにはどうもその点だけが信じられない。 だが、それを確かめる方法はないのだ。 オレはその答えを信じるしかなかった。 「しかし、JBに電撃が効かなかったらどうするつもりだったんですか?」 「効くさ」 「随分と強気ですね。 根拠はあったんですか?」 「ああ。 同じ方法でヴァチカンのリジェネレータを返り討ちにした事がある。 もっとも、この組織でははじめてだがね」 「・・・以前はどこにいらしたんですか?」 「さあな。 無闇に吹聴するたぐいの話しではないさ」 その時、オレはフレデリックの服が普通の物(彼は高級なスーツを着ていた)である事に今更ながら気がついた。 そのスーツはいまやオレの流した血が染み込んで酷い有り様となっていた。 「・・・申し訳ありません」 「なんの話しだ?」 「服の事です」 「これくらいなんでもない。 気にしないでくれたまえ」 「しかしなぜスーツなど着ているんですか?」 「JBとの交戦で服を失ってしまったんだ。 戦闘服の替えもなかったからな。 だが、裸同然の格好という訳にもいかない。 しょうがないからこの服を着ていたという訳だ」 彼がJBと遭遇し、奇妙な方法でそこから逃げ出したらしいという事は、JBの言動からも予測はしていた。 だが、どうやって逃げ出したのだろうか? JBは、そう簡単に敵を逃がすような戦闘者ではない。 それに、彼の服を着ていた死体の事がどうにも分らない。 「どんなトリックを使ったんですか?」 「キミは奇術師が奇術のネタをそう簡単に教えるともでも思っているのかね?」 「そうでしたね。 ところで・・・なんで、奇術師なんです?」 それは先ほどの戦いの時からずっと疑問に思っていた事だった。 「それも秘密だ」 「もしかして、JBにそう言われたからですか?」 「さて、な」 フレデリックはそう澄まして答えた後、口調を僅かに変えてオレに告げた。 「キミはもうJBの事は忘れたまえ。 ここからは私の仕事だ」 それはいつもの冷徹なフレデリックの声だった。 そして、そういった言いかたをする時には大抵、人が死ぬ。 「・・・ヤツを殺すんですか?」 「これだけの事をやった者を生かしてはおけない。 情報を引き出せるだけ引き出したら彼には死んでもらう」 そして、そこから得られた情報で、さらに多くの人死にが出るだろう。 JBに暗殺を指示した者は、その事を心の底から後悔することになるであろう事は間違い無い。 「非情ですね」 「安心したまえ。 キミは私の部下だ。 私は部下に対しては優しい上司でありたいとおもっている」 「・・・それを聞いて安心しました」 彼はなぜか部下に対して・・・いや、『自分の完全な味方だ』と認識した相手には不思議と優しい。 だが、敵に対してはどこまでも冷酷になれる。 いつか、オレも彼に捨てられる日がくるのだろうか? オレはそう思いはするが、それを聞くわけにもいかない。 今は彼の言葉を信じるしかないのだ。 そんなオレの考えが読めたのか、彼は口調を僅かに緩めてオレに告げた。 「キミはなんの心配もしないで、私に仕えていてくれれば良いんだよ。 その代償に、キミは組織でも珍しい存在となれる」 「どんな、存在です?」 「首領直属のハンターだよ。 面白そうな話しだろう?」 どうやら彼は、どんな地位に昇りつめても、オレの事を手放すつもりはないらしい。 だが、オレは彼の部下である事には何の不満もない。 そう考えれば、これはそう悪い話しじゃない。 彼がなぜオレのような一介のハンターに、ここまで拘るのかは分らないが・・・少なくとも一つだけ分かることがある。 それは、彼を裏切った時、オレは間違い無く殺されるという事だった。 ・・・そう。 JBのように・・・。 「確かに面白そうな話しですね。 期待させてもらいます」 そう理解したオレは『この人にだけは逆らうまい』と心に誓いながら、そう答えたのだった。 フレデリックは来須を医務室に運び込むと、あるフロアに向かって歩いていた。 その姿は先ほどまでの、来須の血に染まったスーツなどではない。 今は、それとは異なるが、どことなく人に嫌悪感をだかれそうな黒づくめの格好をしていた。 それは、スーツでもないし、コートにも見えない。 一言で言うと『奇妙な服』だった。 だが、彼はいつ着替えたのだろうか? それに着替えがないから、スーツを着ていたのではなかったのだろうか? そして、目的のフロアの、とある部屋に辿りついた時。 そこには既に先客がいた。 その部屋は闇に包まれており、フレデリック以外ならその人物の存在に気付くことはなかったであろう。 「ジャネットか」 「はい。 今回の一件の裏が取れました。 これはやはり『事故を装った暗殺』が目的です」 「だろうな。 タイミングが良過ぎる。 どうせ、黒幕は・・・」 そこで、彼は組織の大幹部の一人の名をあげた。 「恐らくは。 フレデリック様の首領就任を阻むためだと思われます」 「だが、事はそう簡単な話しなどではない。 この件の裏ではヴァチカンも一枚噛んでいる」 「ヴァチカンが?」 「あのエセ聖職者どもめ。 色々と小細工をしてくれる。 だが、リジェレネーターを刺客としたのは失敗だった。 それを近い内に思い知らせてやらんとな」 それから数週間後。 ローマ法王の寝室でJBの生首が見つかるのだが、それは世間に知られることはなかった。 「・・・何を企んでいるのでしょうか?」 「なに、今までもあの連中とは色々あったんだ。 だが、昔から続くこの因縁にもそろそろ決着をつけないとな」 「・・・私に出来ることなら何でもやらせて頂きます」 「なに、そう焦る必要はない。 JBを倒したのはハンター来須と人間フレデリックだ。 そこに私の事を裏付ける証拠は何一つない」 「では・・・」 「そうだ。 今はまだ私の存在は、彼らには見えてなどいない。 我ながらここまでよく隠しとおせたものだとも思うが・・・それも、そろそろお終いかもしれんな。 今度の一件からしても、ヤツラが『今の私の事』を疑わしく感じ始めているという事だろうしな」 「・・・」 「案ずるな。 私は千の顔を持つ男だ。 もう一度最初からやり直すことなど苦にもならない。 それに、ヴァチカンの聖職者どもがどうあがこうが・・・今の私の歩みを止めることなど出来はしないのさ。 我らが盲目の王の降臨は、もう誰にも止められない。 この世界は・・・いずれ私のものとなるだろう」 この部屋が闇に包まれているのは彼女にとってまさに幸運であったのだろう。 その闇の中。 ジャネットの目にはフレデリックの姿は奇妙に歪んでみえた。 彼女の目に映るその姿は、とある書物に載っていた『とある紋章』に酷似しているように思えたのだ。 その姿を直視せずにすんだジャネットだが、この日から数週間後。 彼女はこの闇の中で目撃した光景が元で毎夜のように悪夢を見るようになり、それが原因で自殺することになるのだが・・・。 それはまた別の話しである。 <終わり> |