[PR]テレビ番組表
今夜の番組チェック

東京魔人學園SS 妖怪ハンターシリーズ6 作;雪乃丞

魔女の守 《結》






 私達が博物館に辿りついた時、その中は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
私達の視界の中でさえ、何人もの人が悪魔に食われていたのだ。

 その悪魔をクルスが片っ端から撃ち殺していく。
弾の尽きた銃から、薬莢を排出して次の弾を装填しながら、クルスは離れた場所にいた私に指示を出す。

「ジャニス! ドアと窓を全部閉鎖しろ! 受付かコントロール・ルームに操作盤があるはずだ!
火災時の非常用シャッターがあるはずだから、それを降ろすんだ!」
「ちょっと! まだ生き残ってる人もいるかもしれないのよ!」
「こいつらが町に出たら・・・もっと酷いことになる」
「・・・分った! アナタはどうするの!?」

 装填の終わった銃を片手に静かに答える。

「オレはゲートデーモンを始末する」
「分った! ・・・死んじゃイヤよ!」
「お前もシャッターを降ろすまでは絶対に死ぬな! 絶対にココで食い止めるんだ!」

 その声を聞きながら私はコントロール・ルームを探す。
案内図では・・・あった! 3階の一番奥。 階段のから右手の方ね。
私は階段をかけあがりながらクルスの無事を祈っていた。







 日ごろの行いが良かったのだろうか? それとも悪運が強いのだろうか?

 ありがたい事に、コントロール・ルームまで悪魔に遭遇せずに済んだ。
黒い巨石があるのは一階。 ここまではまだ悪魔も溢れてはいなかったのだろう。

 しかし、コントロール・ルームは無人だった。 しかも、床の所々に血らしき液体があった。

 ・・・何かおかしい。 なんでこの部屋に誰もいないの? それになんで血が?

 言い様のない不安を感じながらも、私は操作盤にある目的のスイッチを探して行く。

「防火シャッターは・・・あった! これが入り口のやつね!」

 スイッチのカバーを肘で叩き割ってONにする。

 これで入り口は閉鎖した。 次は窓だ。 しかし、窓の防火シャッターはなかなかみつからない。

 ・・・どこにあるの?

 焦りはますます高まっていく。

 ・・・盗難防止シャッター? これかな?

 それらしいスイッチを手当たり次第に押していく。
偶然だったのだろうか? コントロールルームの窓のシャッターが降りた。
おそらく他の窓にあるシャッターも降りているだろう。

「ふー・・・間に合ったかな?」

 ようやく一息つけた私は、モニターにクルスの姿が映っているのに気がついた。
館内放送のスイッチをONにするとクルスに問いかける。

「シャッターは降ろしたわよ! そっちはどう!?』

 聞こえてないのだろうか? クルスは呆然と立ち尽くしていた。

 何かあったんだ!

 そう直感で感じた私は、コントロールルームを飛び出すとクルスのいる一階の展示室に向かった。







 私がクルスの元に行くと、クルスは床にひざまづいて座っていた。

「クルス! 何があったの?」

「・・・なあ、ジャニス」

 これが本当にあのクルスなのだろうか? 彼は泣きながら・・・笑っていた。

「・・・な、なあに?」
「日本のことわざに、こんなのがあるんだ。「初心忘れるべからず』ってな。 ・・・知っているか?」
「い、いいえ」

 彼の目の前には、粉々に砕けた下半身を引きずってもだえる悪魔が一体。
そのむこうには・・・親子だろう。 母親と娘が無残に引き裂かれた死体があった。

 クルスはゆっくりと立ち上がると、床の悪魔の頭を踏みつけながら、首に下げたロザリオを引き千切った。

「忘れてかけてたぜ・・・そうだよな。 初心忘れるべからずってな・・・良い言葉じゃねーか」
「ク、クルス・・・」

 私は、それ以上言葉を続ける事が出来なかった。
彼の涙を流しながら笑った顔は、床の悪魔の顔よりも邪悪に見えて・・・恐ろしかった。

「折角、忘れる事が出来そうになっていたってのにな・・・。
余計なマネしやがって・・・最高にクソッタレな気分だ・・・みな殺しにしてやるぞ・・・。
一匹残らずブチ殺してやるぞ! クソッタレどもぉおおおおお!!」

 その声と共にクルスは悪魔の頭を踏み潰した。
さらに弾丸を数発撃ちこまれて、悪魔の死体は完全に灰になる。

 それを確認もせずにクルスは展示室の奥に向かって走りだしていた。
これがさっきまでフラフラだった人間の姿なのだろうか?
そのスピードは、森で戦っていた時よりも早かったのだ。

 それからはほとんど一方的な殺戮だった。 彼は正真正銘のハンターだった。

 これが彼の本来の能力であるのだろうか?
一発の弾丸は数体の悪魔を貫通して、一気に粉砕して灰にしていく。
その灰の舞う中を彼は一気に駆け抜けて行く。

 私はついていくコトすらできないでどんどん引き離されていく。

『スゴイねぇ。 並外れたなんてもんじゃないね。 化け物じみた精神力だよ。
これが彼の本当の力だったのかも知れないねぇ』
『目が覚めたの?』
『ああ。 おかげでもう少しふんばれそうだよ』
『彼・・・怖い』
『そうだろうね。 何が原因かしらないけどさ・・・ブチ切れてるねぇ』
『・・・大丈夫なのかしら?』
『あのままだとすぐに動けなくなるよ? 彼は精神力を全然セーブしてない。
普通なら、すぐにへばって動けなくなるところだ』
『じゃあ・・・』
『ああ。 彼が勝利するのが先か・・・限界が訪れるのが先か・・・その勝負になるだろうねぇ』







 私達が黒い巨石のある場所まで辿りついたのは、それから十分後だった。

 すでに何十体もの悪魔を一人で始末した来須は、すでに息があがっていた。

「キサマ・・・狩ル者ダナ?」

 その声は黒い光を放ちながら鳴動する巨石の上空。
その位置に浮かんでいる、人にちかい姿をした悪魔の口から放たれた。

「ああ、ハンター『来須 狩夜』だ。 地獄の底までオレの名を忘れるな」
「クックック・・・兵士相手ニ頑張リスギタカ? 随分疲レテイルナ?」
「後はキサマだけだ。 問題ない」
「イイダロウ。 私ノコトハ『ジェネラル』トデモ呼ンデモラオウカ」

 そういってジェネラルと名乗った悪魔は床に降り立つ。

「兵士が皆殺しにされてようやく重い腰を上げたか? クソ悪魔どものクソ親玉が」
「ソノへらず口、イツマデ続ケラレルカ楽シミダ」

 ジェネラルの姿がぶれたと思ったらクルスが吹き飛ばされる。 どうやら体当たりを食らったらしい。
さらに、吹き飛ばされた先に先回りしたジェネラルが、吹っ飛んでくるクルスの体を蹴り飛ばす。

 展示された銅像に叩きつけられたクルスの口から、鮮血が舞い散った。

「ドウダ? マダサッキノへらず口ガ叩ケルカ? クソ・ヒューマン?」

 クルスは息も絶え絶えで、その言葉に何も言い返せない。

 力の差は歴然だった。 こんな悪魔が相手では、疲れ切ったクルスに勝ち目なんてないだろう。

『このままだと勝ち目はないわね』
『ああ、マズイよ。 あんなのが出てきたのは計算外だ。 融合するしかないよ!
融合さえ済ませば、あんなの相手でもまだ勝ち目はあるよ!』

 そうだ。 彼女が本来の力を取り戻せば・・・なんとかなるかもしれない。

『クルスを救いたかったら・・・それしかないのね』
『じゃあ、いいんだね? もう後戻りは出来ないよ?』
『ええ・・・いいわ。 融合しましょう』

 その瞬間、私は声にならない悲鳴を上げた。

 なんと表現すればいいんだろう? 心がゆっくりとすり潰されて何かを混ぜられる。
そんな苦痛としかいいようがない。 それほどの不快感と痛みだ。

 自分が何か別のモノに変質していく・・・そんな悲しさを感じる。

 そして・・・最後の仕上げとばかりに、デイジーの記憶が流れ込んできた。

 ・・・そうか! やっぱりそういうカラクリだったんだねぇ!!

 その瞬間、私はデイジーを心の底から拒絶する。 融合は最終段階で中断されたのだ。

『グアァアアァアァアァアァ!』

 デイジーは私の中で砕け散りそうになった自我をなんとか繋ぎとめた。
敵ながら流石ってことろかねぇ。 私にはまだあんな芸当はできゃしない。

『何てことするんだい!! もうちょっとで死ぬトコロだったよ!』
『わかったよ。 あんたの魂胆ってやつがさ。 あんた・・・あの悪魔を操ってるね』
『・・・そうかい。 気付いたのかい?』
『フフフ・・・もう負けないよ。 私はあんたの能力と経験を貰ったんだ。 覚悟するんだね』
『いいだろう。 勝負してやるよ。 魔女になりたてのアンタが、百戦錬磨の私に勝てと思っているのかい?』
『焦るんじゃないよ。 勝負は後だよ』

 その前に・・・やることやっておかないとねぇ。

「デーモン・ジェネラル。 いや、ジャック・ディスペンサーって名前だったねぇ。
御苦労だった。 契約通り事はなった。 もう帰っていいよ」

 私の声の変質に気付いたのか、片手でクルスの頭を掴んで宙吊りにしていた悪魔がふりかえる。

「オオ! ソノ蛇眼! マサシク主ノ目、魔女ノ証! 蘇ッタノカ!」

 そう。 私の体はすでにジャニスではなくなっていた。 デイジーの特徴をことごとく移されていたのだ。
これが融合の結果だったのだろう。 しかし、心までは完全に変質してはいない。
いわば、ジャニスと魔女デイジーの両方の特徴を併せ持った『魔女ジャニス』に変質したのだ。

「ああ。 お前のおかげだよ。 約束通り、全ての契約を破棄させてもらうよ」

「ワカッタ、主ヨ。 デワ、私ハ元ノ世界ニ帰ラセテモラウ」

 そう言うが早いか、悪魔はクルスを投げ捨ててゲートデーモンを通って自分の世界に帰って行った。
ゲートデーモンの魔石も、その役目を終えて粉々に砕け散った。
これで、もうこの地に悪魔が来ることはないだろう。

 クルスは・・・よかった。 まだ生きてる。

 今度はこっちの番だね。

『待たせたねぇ。 始めようか』

『やってくれるじゃないか。 アンタ・・・後悔するよ?』

『そのセリフは勝ってからにするんだねぇ。 今のは邪魔できなかったろ?
アンタはもう私には勝てないんだよ。 分ったかい? この若作りが趣味の化石魔女のクソババア!』

『キーーーーー! いちいちムカつく小娘だねぇ!! お望み通り殺してやるよ!』

 私達の果てしない殴り合いと口喧嘩は、それから数時間に渡って続く事になる。







「クルス! クルス! 返事をしな! 生きてるんだろう!」

 クルスは、私の頬を叩きながらの問いかけに、ようやく目を覚ました。
その目は驚愕に見開かれる。 まあ、突然、この目を見たら驚くだろうねぇ・・・。

「ジャ、ジャニスなのか? どうしたんだ? その目は・・・」

「この目かい? 格好良いだろう? 蛇眼ってやつさ。 まあ、邪眼ともいうけどねぇ。
あとさ、私の事は『魔女ジャニス』って呼んで欲しいねぇ」

「お前・・・本当にジャニスか? デイジーじゃないのか?」

 あっけらかんと笑う私に、疑惑の目を向けるクルス。 まあ、しょうがないだろうねぇ。
クルスはジャニスしかしらないんだ。 私はもう別人になっちまったしねぇ。

「あのクソババアはブチ殺してやったよ。 まあ、そのうちまた復活するだろうけどねぇ。
あのクソババア、用意周到に転生術を使ってやがったんだ」

「・・・話しが見えないな。 最初から最後まで順番に説明してくれるか?」

「ああ、いいとも。 食事つきで私をアンタのスポンサー様に会わせてくれるならねぇ」

「なんだ? 何を言ってる?」

「私もアンタみたいにどっかの『組織』に加入しようかと思うんだよ」
「本気でいっているのか? 組織に入ったら、もう二度と表の世界に帰れなくなるそ?」
「本気さ。 それに・・・私もアンタと同じ世界を見たいんだ。 いいだろう?」
「・・・分った。 善処しよう。 それより・・・」

「分ってるさ。 全部教えてあげるよ。 あの性悪化石魔女のクソババアの陰謀をねぇ。
全てはあの魔女の若返りのタメだったのさ。
どんなに錬金術と黒魔術を併用した若返りを使っても、せいぜい200年しか生きられない。
そこで考えたんだ。 どうすれば若い体を手に入れる事ができるかってねぇ」

「どんな方法だったんだ?」
「色々試したみたいだね。
まずは精神の乗っ取りを試したんだ。 ようするに悪霊になったんだねぇ。
しかし、これは上手くいかなかった。 うまく体を操れない上に、記憶の劣化まで起こったんだ。
これでは完全な若返りには程遠いって、考えたのもうなずけるねぇ。
他にも色々試したけどダメだったんだんだ。
そして最後に、非常手段として用意していた術に目をつけたんだ」

「非常手段の術?」
「転生術のことだよ。 突然死を恐れるんだよ、長生きした魔女ってのは。
溜め込んだ知識と経験は何物にも勝るからねぇ。
それで、その転生術に色々アレンジを加えて将来への布石としたんだ。
まずは自分そっくりの子供が生まれるように、土地に特殊な呪いをかけたんだ。
だから、この地区で生まれ育つ子供には、銀髪で容姿がデイジーに似た子供が多いんだ。
そして、その子供の体格と容姿を転生の条件に入れた。
自分そっくりでないと、体を上手く操れないのは経験済みだったからねぇ」

「あの悪魔はどうなったんだ?」
「自分の世界に喜んで帰っていったよ。 あの悪魔の存在も計画の内だったんだ。
なしくずしに私と融合できるようにねぇ。
赤子に転生したら・・・ロクに準備できない内に死んでしまうかもしれない。
それじゃあ、折角転生したのに意味がなくなるだろう?
そこで転生のルールを逆手に取る方法を思いついたんだ。
『どうしても自我の乗っ取りを行わなければならない非常時に限り、本人の同意を得た上でなら
 成人した人間への転生を認める』と例外条項にあるのを知ってるかい?」
「初耳だ」
「そこが狙いだったのさ。 余り知られてないルールだからねぇ。
そこで自分の契約してきた中で最強の悪魔のジャックにこうもちかけたんだ。
『もしもこの転生がうまくいけば、元の世界に帰れるように全ての契約を破棄してやる』ってね。
それで、大きな巨石の中に封印されてたあいつは、やたら張り切って頑張ってたってわけさ」

「張り切ってた?」
「普通はあそこまで本気にはならないもんなんだよ。 悪魔ってのは。
ふてくされたガキと同じさ。 いやいや命令に従ってるからねぇ。 多分アンタが始めてだと思うよ。
元の世界に帰りたくて死に物狂いになった上級悪魔と真正面から戦ったのは。
まったく・・・よく生き残ったもんだねぇ」

「笑いながらそういう事をいうんじゃない」
「まあいいじゃないか。 生き残ったんだから。
まあ、ここに来る前から私はおかしいって思ってたんだよ。 今なら全部分るけどね。
時々、デイジーは私の中で眠るって言って姿を消してたんだ。 あれはウソだったんだ。
そうやって時々、私の体から外に出ていたんだよ。
まあ、悪霊になった事もあるみたいだったしねぇ。 慣れてたんだろうよ。
そうやってゲートデーモンの魔石を起動させたり、悪魔に指示を出していたんだ」

「道理で都合よく次から次へと悪魔が現われたわけだ」
「そうだね。 あれはデイジーがタイミングを計った上で行った事だったんだからだねぇ。
普通ならこっちの大きい方から片付けるはずなのに、こっちの巨石の時間稼ぎ用に用意していた小さい方を
先に片付けさせたあたりで、何かおかしいとは思っていたんだよ。
コントロール・ルームとか2〜3階にいた悪魔を1階に集めるのには苦労したみたいだよ。
なんたって私を殺すわけにはいかなかったんだからねぇ」

「じゃあ、森でのお前の負傷は予定外だったのか?」
「森での戦いで私の体を死なない程度に傷つけたのは、アンタの疲労を重くするのが目的だったんだ。
まあ、時間稼ぎの一環でもあったんだけどね」
「なにもかも計算づくか。 イヤな女だ」
「まったくだねぇ」

「結局、この石はなんだったんだ?」
「ゲートデーモンの魔石ってのは悪魔を材料にしてデイジーが作った召還ゲート発生機みたいなモノだよ。
そうやって順番に魔石を起動してアンタを疲れさせて、最後に上級悪魔と戦わせる。
全ては、私に融合の了解を取りつけるのが目的だったんだろう。
まあ、融合とは名ばかりの体の乗っ取りだけどねぇ」

「お前はどうやってデイジーに勝ったんだ?」
「私はアイツにほとんど殺されかけれてた。 でも、そのおかげであいつの力を手に入れたんだ。
油断してたところに力一杯拒絶してやって、自我を引き裂いてやったんだ。
まあ、流石にそれだけじゃ殺せなかったけどねぇ。
後は徹底的に挑発して、自分がボロボロになってるのに気付かせないようにして、殴り合いにもちこんだってわけさ。
余裕だったよ。 おとといきやがれってんだ、あのクソババア!」

「なんだが妙にババ臭くなったな」
「おだまり!」

 そうなんだよねぇ。 あいつのほとんどの部分を受け継いだもんだから喋り方まで変わったんだよねぇ。
・・・ああ、我ながらババ臭いねぇ。 わたしゃ、悲しいよ。

「まあ、今度現われるのは何年後になるか知らないけどさ。
その時に備えて仲間や後継者を育てて、この世界にあいつの入り込む隙間をなくしてみせるよ。
今度、罠にはまるのは何も知らないで生まれてくるあいつの方さ。
そのためにもアンタのスポンサーから資金援助が欲しいのさ。
組織にとっても魔法使いの集団が育成できるんだ。 悪い話しじゃないだろ?」

「なんだかやけにやる気になってるな。 何かされたのか?」

「あのクソババア、いっちょ前に呪いまでかけて死にやがったんだよ! クッソー! 悔しいィ!!」
「呪い?」
「ああ。 詳しくは教えられないけどねぇ。 ・・・まだ死にたくないだろ?」
「・・・大丈夫なのか?」

 全然、大丈夫じゃないんだよ。

「大丈夫さ。 死ぬような呪いじゃないからねぇ」

 でも、それをアンタにだけは教える訳にはいかないんだよ。

 私の脳裏には粉々になりながら高笑いするデイジーの声が今でも残っている。

『これで勝ったなんて思わない事だねぇ!! 私はお前に呪いをかけた!
お前の愛する人物は必ず死ぬ! 私みたいに生涯一人ぼっちで過ごすがいい!
お前が愛する想いを伝えたら、そいつは必ず死ぬ事になるよぉ!
ヒャーッハッハッハッハ!! 生涯アイツへの気持ちを心に抱いて生きるがいいさぁ!!』

 全てが変わった私だけど・・・いまだクルスへの『想い』は残っている。

 いや、『かなえてはいけない想い』ってやつに変わったせいで、その『想い』はますます強くなっている。

 おそらく私は生涯、彼への『想い』を抱いて生きるのだろう。

 まあ、それも悪くない。 生涯をかけた恋愛ってのも悪くないだろう。







 あれからもう随分と経った。

 あれから来須とは事あるごとに一緒に仕事をするようになった。
私の願い通りって感じだねぇ。 本当は、彼の相棒になりたくて組織に入ろうとしたんだから。
まあ、結局はフリーの魔法使いとして登録しただけに留まったけどねぇ。

 おかげで、今じゃ来須専門の傭われ助手ってトコロさ。
ヒマになれば後輩の育成に励んでいるんで、こう見えてもなかなか忙しいんだよ?

 まあ、横の運転席で仏頂面して車を運転する彼が、どう考えているのか知らないけどねぇ。

「アンタ・・・私が故郷から逃げ出した日のこと覚えているかい?」
「・・・もう忘れた。 お前も忘れろ」

 私は今でも覚えているよ。

 アンタが私の両親に身柄を引き取りたいって言ってくれた日の事を・・・。

 私はあの悪魔襲撃事件の首謀者にされちまったんだ。

 まあ、無理もないだろうね。 私の目は人の物ではなくなってたんだからねぇ。

 デイジー・・・今でもあんたの言葉を思い出すよ。

『人間は肌の色が違うだけでその人間を特別視しちまう生き物さ。
体の構造の違う彼らを、自分と少し違う人間と考えるなんて・・・所詮は無理ってもんなんだろうねぇ。
だから・・・私達は決して彼らと共存なんてできないんだろうね』

 デイジー、アンタもそうだったのかい?
この目のせいで『放浪の魔女』なんて呼ばれて一人ぼっちでアチコチ転々としてたのかい?
だからアンタは人と共存できない悪魔って存在に共感してたのかい?

 だから・・・ずっとクルスと一緒にいたいと思ってた私が憎らしかったのかい?
それで、あんな一人ぼっちにならざる得なくなるような呪いを私にかけたのかい?

 多分、そのせいなんだろうね。

 私の優しかった両親や親友やホテルの仲間まで・・・みんな私の事を悪魔って呼んで・・・殺そうとしたんだからね。
アンタもそうだったんだろう?

 そんな彼らから、私を守ってくれたのが来須だったんだ。
来須・・・呪いが怖くて言葉に出来ないけど、アンタには本当に感謝してるんだよ?

「ついたぞ。 さっさと降りろ」

「本当に名残惜しいけど・・・これでまた暫くはお別れだねぇ」

「もう二度と会う事もないだろう」

「なんだい? まだ怒っているのかい? ちょっとしたジョークだろぅ?」

「・・・ジョークで一日に二回も警察に捕まえられたら・・・お前も同じ気分を味わえるさ」

「心配要らないだろ? どうせ組織の口添えで何も記録には残らないんだし」

「そのせいでどれだけいらん仕事をするハメになると思うんだ! なんなら一回捕まってみるか!?」

 車の窓から身を乗り出しながら青筋を浮かべている彼の頭を両手で掴むと、不意をついて唇を奪う。

「お詫びの印だよ。 心配しなさんな。 口紅はついてないから。 じゃあね!」

 そう言い残して、私はいつものように雑踏に紛れ込んむ。

 呪いがあるかぎり、どうしても私の愛情表現は歪んだ形になってしまう。

 でもさ・・・色んな意味で大好きだよ、来須。 私の生涯の《親友》兼《相棒》としてね。



<終わり>





 ここまで読んで下さった方に感謝です。
御意見、御感想、リクエストなんでも結構です。 待ってます!

 今回はどこか分らない場所の話しです(笑)
少なくとも海外であることは確かです。 多分、アメリカとかあっちの方だと思います。
なんで書いてる本人がわからないのかってツッコミは御容赦下さい。

 さて、今回は『魔女』メイン。 オプションで『呪い』があります。
かなりPOPですが、最後がハッピーになり切れないところが妖怪ハンターらしいのかもしれません。

 これでジャニスさんの設定は全部吐き出しました。
さらなる再登場を希望する方はメール下さい。 善処しますので・・・。

 メールや感想によって、風森 昌平クン(妖怪ハンター4:真紅の鎌参照)は再登場が決定しました。
どんな風に出てくるかは、次回作以降に期待ってトコロで。

 しかし・・・ジャニスさん出てくると話しがどんどん膨らむ。 ・・・なんでだろう?
難しいですね。 話しが長くなると最後なんてネタばらしするだけでエライ事になってます。

 もっと簡潔に短くを目指そう。 多分、来須一人だけなら短くまとまるんだろうけど。