
東京魔人學園SS オリジナル短編.
request by 『ヴェイル』様 / write by 雪乃丞.
天運は閃光の如く
その『華』の一文字を背負った青年は、自分の前に座った長髪の青年を見て心底驚いていた。
「あ、あのよ………なにしてんだ?こんなトコで………」
なぜなら、その青年は、この時間、こんな場所にいるはずのない………。
いや、いてはいけない筈の人物であったからである。
「何とは?」
そして、その手に握られた扇子で優雅に口元を隠すに至って、その青年の口調はなにやら怒った風になっていた。
「だ・か・ら!仕事ほっぽりだして、こんな場所で何してんだって言ってんだよ!」
「あまり大声を出さない方が良いですよ?周囲の方々も驚いてらっしゃるでしょう?」
「………ちょっと、こっちこいよ」
そう言って、珍しく青筋を浮かべたその青年、村雨祇孔は、長髪の青年の腕を掴んで無理矢理席を立たせる。
そして、そんな事をされてもなお微笑を崩さない青年、御門晴明を引きずるようにして、店のトイレに連れこんだ。
「このような場所に連れ込んで………何をしたいのですか?」
「あのよ………御役目、御役目っていつもうるせーお前が、その肝心の御役目をほっぽり出して………。
しかも、なんで………なんで、こんな場末の賭場にいるんだ!?」
そんな、なおも混乱しているような村雨を面白そうに見やリながら、御門はなおも尋ねた。
「私が、ここにいる事が、それほどまでに変ですか?」
「ああ、変だ。仕事はどうした?」
「芙蓉に任せました。そんなに大きな仕事ではないので、芙蓉に任せておけば、おそらく大丈夫でしょう」
「いいのか?芙蓉一人にいかせて?」
「気になりますか?」
「あ?………まあ、な」
「では答えましょう。実はよくないのです。一人なら、失敗する可能性が高いですね」
「て、テメエ………本当に御門か?」
そう困惑と怒りを滲ませる声で尋ねる村雨に、御門は笑みを浮かべたまま答える。
「私は、私ですよ」
そして、御門はなおも告げた。
「助けてやりたいと思いませんか?」
「………なんだと?」
「このままでは、芙蓉は大怪我をするでしょう。しかも重傷です。
いくら死なないとはいえ、痛みは感じるのです。さぞ、苦しむ事でしょうね?」
「何を考えてやがんだ!テメエは!」
その怒り様を、なおも面白げに見やりながら御門は答えた。
「ですから、言っているのです。助けたくないですか?………とね」
その端正な顔を彩る微笑を見た村雨は、まるで悪魔でも見たかのような気分を味わっていた。
「どうしろってんだ?」
「ほう………やはり気になりますか?」
「テメエは気にならねーのか?」
「仕事を失敗するかも知れないという事だけは」
「………芙蓉の事はどうなんだ?」
「別に?式ふぜいがどうなろうと………知った事ではありません。第一、死なない者の事を案じてどうするのです?」
そう冷めた口調で答えた御門に、村雨はそれまでの怒り様がウソであるかのように、平然とした声で尋ねた。
「で?オレに何をしろってんだ?」
「ほう………冷静ですね?」
「これがテメエじゃなかったら今頃は動けなくなるまで殴ってるところだがな………。
テメエは、どんなに殴ったって口を割るようなタマじゃねぇ。オレは無駄な事をしたくねぇんだ。
で?オレに何をさせたい?」
そう忌々しそうに答えながらタバコを咥えた村雨に、御門は微笑混じりに告げた。
「アナタの好きな賭けをしましょう。私に勝てれば………芙蓉の向かった場所を教えてあげます」
そして、その奇妙に緊迫感に包まれた勝負は始まったのだった。
テーブルに戻るなり、村雨は面白くもなさそうに告げた。
「で?何で勝負するんだ?カードか?札か?それとも馬か?」
「そんな当たり前な物では面白くありません。とりあえず………出ましょうか」
そう答えると、御門はその店を後にする。
そして、数分後。
御門はその裏通りに立ったのだった。
その後ろを面白くもなさそうについてきていた村雨は、仏頂面で尋ねかける。
「で?どんな賭けをするってんだ?」
「あの角………電柱の横にあるヤツです。分りますか?」
「あ?ああ」
そう答えながら村雨は、その角の向こうには『とある系統の店』が密集しているのを思い出していた。
「簡単な話しです。あの角を次に通りかかるのが男性か、女性か………それで勝負しましょう。
簡単な賭けでしょう?」
それを聞いた村雨は、ニヤリとシニカルな笑みを浮かべた。
「………面白ぇじゃねーか」
これは単純に運だけを競い合う類の勝負である。
恐らく御門は普通のギャンブルでは、強運のギャンブラーである村雨と勝負にならないと分っているのであろう。
それで、こんな賭けを提案したのだろう。
確かに、こんな偶然だけが結果を左右するような勝負では、今まで村雨が培ってきたギャンブラーとしての経験は生かせない。
しかし、偶然だけで結果が決まるという事は、その結果には運が大きく作用するという事である。
御門は、村雨の持つケタ外れに強い強運………天運と勝負したかったのだろうか?
「オレと運比べをしようってのか?」
「そうです、 技術もなにもない運試し………それこそが真のギャンブルと言えるのではないですか?」
「へっ。分ってねーな。お前はギャンブルってモンを勘違いしてるぜ?」
「そうですか?」
「ああ。ギャンブルの醍醐味ってのは、そんなチンケなモンじゃねーだ」
「ギャンブルの醍醐味ですか?」
「そうさ。単純に運をぶつけ合うだけってのは、実はそんなに面白いモンじゃねえんだ。
例えば………ロシアン・ルーレットがあるよな?
あれは運試しの典型みたいな代物だが、オレに言わせれば、あんなのは自殺ゲームだ。ギャンブルでもなんでもない。
ギャンブルってのは、知識、知性、洞察力、度胸、観察力の全てをギリギリまで使った勝負の事なんだ。
相手と腹を探りあい、相手と狙いを読みあい、互いにそれを超えようともがきあう………。
そんなギリギリの勝負の中にこそ、面白さってのはあるんだぜ?」
そう己の持つギャンブル論を語る村雨に、苦笑を浮かべた御門が答える。
「いつも運任せで勝負してる貴方のセリフとは思えませんね?」
「だから、お前は分ってねーって言うんだ。オレはいつだって必死に勝負に勝ちにいってる。
当然、手抜きは絶対にしないし、勝って当然なんて傲慢な事は考えちゃいねえ。
そうやって真摯に勝ちたいと願い、勝負に挑むからこぞ、そこに天運ってのが生かされるんだ。
勝利の女神ってのはお堅いヤツでよ、こっちがそれこそ命がけってのにならねーと、振り向いてもくれねぇんだよ。
ま、お前にゃわかんねーだろうけどな」
そう話しを締めくくった村雨に、御門は意外そうな目を向けた。
案外、暇人の遊びに過ぎないと考えていたギャンブルに、村雨がここまで己の持論のようなものを持っていた事が意外なのかも知れない。
そんな御門に、村雨は挑むように問いかけた。
「それで?どっちに賭けるんだ?」
「そうですね………貴方はどちらに賭けるのです?」
「オレに先に選ばせるのか?」
「そうですね。どっちが良いですか?」
「そうだな………」
そう悩む素振りを見せる村雨に、御門は面白そうに告げた。
「簡単でしょう?男性か女性か………二つに一つです」
村雨は、二つに一つだからこそ、ここまで悩んでいるのだと分っているのであろうか?
それから数秒悩んだ末に、村雨は答えた。
「よし、オレは女に賭ける」
御門は知り得ないであろうが、そう決めたのには………実は根拠があったのだ。
この場所を決めて、あの角を指定したのは御門である。そこに村雨の思惑というものは、入り込む余地はない。
ゆえに、この勝負にはイカサマの余地はない。普通なら、そう考えるであろう。
現に、御門も村雨に先に選ばせた。それは、そう考えている証拠でもあったのだろう。
しかし、そこにはやはり村雨の持つ天運とでもいうべき物が作用していたのである。
ここは村雨がいつも遊び場にしている歌舞伎町である。
当然、この場所がどんな場所であるかも知っているし、あの角の向こうに何があるのかも知っているのだ。
あの角の向こうには『とある系統の店』………ホストクラブなど女性を主な客層にするお店が密集しているのである。
この時間帯なら………あの界隈を歩いてるのは、女性が殆どなのである。
可能性から考えても、あの界隈に繋がるこの角を男性が通る可能性は低い。そう考えての事だった。
それを知ってか知らずか………御門は笑みを崩さず、驚くべき言葉で答えた。
「良いでしょう。では、私は女性に賭けます。貴方は男性に賭けて下さい」
まさに反則であった。それを聞いた村雨は、しばし絶句した。
「………なんだと?」
「何を驚いているのです?」
「オレは女が通る方に賭けたんだがな?」
「そうですね」
「じゃあ、なんでオレの意志は無視されるんだろうな?」
そう問いかけた村雨に、御門は侮蔑混じりの声で答えた。
「ここが貴方が主に遊び場にしている界隈だと、私が知らないと思うのですか?」
「………そういう事かよ」
「そういう事です。私は、貴方がこの辺りをよく知っているのを知っています。
そんな場所でこんな賭けを持ち出しても、真っ当な勝負には成りえません。
それに先ほど、私は貴方の持つ天運と勝負したいと言ったはずですよ?
貴方の選んだ内容から察するに………この界隈には女性が多いらしいですね?」
それを聞いた村雨は、イカサマがばれた時のような気分を味わっていた。
「まあな。あの角の向こうにはホストクラブが多い。当然、女性客ばっかだ」
「なるほど………だからなのですね。確かに知識は重要な要素であったようです。
果して、貴方の持つ天運が、これほど低い可能性を覆せるかどうか………見物ですね?」
村雨は、こうして自分の運が呼んだ逆境と勝負する事になったのだった。
緊張に満ちた数分が、何事もなく経過した。
この辺りが人通りが少ない事が幸いして、その角は未だ誰も通り過ぎていない。
しかし、いつかは誰かが通るのだ。ここは新宿歌舞伎町。日本一の歓楽街である。
そんな場所に誰も通らない道など、存在するはずもない。
『くそっ………生殺しってヤツだな。これは………』
それを忌々しく感じながら、村雨は黙ってその時を待っていたのだった。
仏頂面でタバコを咥えた村雨は、100円ライターの点火がうまくいかずに、それを何度も繰り返している。
そこには、村雨が感じているであろう焦りがあらわれていた。
「どうしたのです?あとは結果を待つだけなのですよ?もっと面白そうにしたらどうです?」
「死刑宣告を待ってる囚人みたいなモンだ。良い気分なんてしねーよ」
村雨はそう忌々しそうに答えた。
村雨は、今まで自分の持つ天運を疑った事は一度もない。
自分の勝負師としての勘や、持って生まれた運を信じきれない者に、勝利は掴めないのだ。
例えばポーカーでカードが配られている時、何かしら役が出来ていたとする。
その時、その5枚の内4枚がスペードであったとすると、既に出来上がっている役を崩す事になってでも、村雨は迷わずその一枚だけ種類の違うカードを捨てる。
4種類のカードのトランプの内、スペードが配られる可能性は、単純計算で25%である。
しかし、5枚の内4枚がスペードであった場合………しかも、それまでの手にスペードのカードが多く感じられた場合など………。
この勝負をする上での『己に配られるカードの流れがスペードよりである』と考えるのだ。
そして、その考えに………己の判断と運に殉じて、迷わずそれを選んだ結果、配られるカードもやはりスペードがくるのである。
それは単なる偶然の産物であろう。
しかし、村雨のようなギャンブラーにとって、それは偶然などではない。必然であるのだ。
自分の下した判断に殉じれる事こそが、勝利の秘訣とでも言えるものなのであろう。
しかし、今回だけは事情が違った。
自分の運が呼んだ幸運な状況………勝てる状況は、一転して敗色濃厚な状況になった。
それは、自分の運に挑むというのと同意でもあったのだ。
自分の天運が呼び込んだこの状況を打破するには、自分の天運をも否定しなくてはならない。
天運をもつ男に、その天運を越えられるかどうか………それが勝負の分かれ目なのだ。
そんな村雨に、勝算などあるはずもなかった。
これが下りれる勝負なら、とっくに下りているであろう。しかし、村雨は逃げる訳にはいかないのだ。
挑まれた以上は、勝負してそれに勝利しなくては勝負師とはいえないのかも知れない。
そして、この勝負には………村雨のお気に入りの、あの芙蓉の安全が賭けられているのである。
逃げる訳にはいかない。なんとしてでも勝たなければならない。そして、自分は芙蓉の元に駆けつけるのだ。
そう考えた村雨は、不意に自分の考えを面白く感じた。
『式の身を案じるような愚か者、か』
それは、いつも自分を庇うような真似をする村雨に向かって、芙蓉が告げる言葉であった。
式神である芙蓉は、厳密には自分の体というもの持たない。
芙蓉の体は、主である御門の霊力によって形作られたものなのである。
そのため、例え大怪我をしても、御門の手によってそれを直す事ができる。
そして、意識を失うほどの大怪我をしても、一時的に召還できなくなるだけで決して死ぬという事はないのだ。
並の式神なら、死もあるかも知れない。
しかし、芙蓉は、陰陽道の神『鬼神・安部晴明』の残した12の神将………不滅の式神の一体である。
生半可な方法では、その存在を封殺するような真似は出来ないのだ。
芙蓉にとって、普通の死とは、己の本来いる世界への帰還程度の事でしかないのかも知れない。
そのせいか、いつも自分を庇って代りに怪我をする村雨を、芙蓉はいつも愚か者呼ばわりするのである。
そんな時、村雨自身もその行いの馬鹿らしさというものを感じることもある。しかし………。
『放っておけねえモンは、しょうがねーよな?』
そう自嘲気味に考えたせいか、その頬が僅かに笑みの形になった。
そして、その心に芙蓉の希に浮かべる微笑が浮かんだ時。村雨の抱えていた不安や焦りは消え失せたのだった。
『オレは天運を持つ男だ。この程度の逆境、なんでもねえ。なんたって運ってのは、逆境でこそ発揮されるんだからな。
まってろよ、芙蓉。このクソいけ好かねえ大馬鹿野郎に、お前の居場所を白状させて見せるからよ………』
その心の声に、その微笑を浮かべた芙蓉はただ『愚か者』と答えたような気がした。
そしてそれを思った村雨は、口元に浮かんだ微笑を深くするのであった。
その変化は突然だった。
今までイライラしていたように見えた村雨から、不意に肩の力が抜けたのだ。
そして、そこにはいつもの村雨が………一流の勝負師としての村雨がいた。
『雰囲気が変わりましたね………なにかあったのでしょうか?』
そう考えながら村雨を見た御門は、その口元に浮かんだ微笑に気がついた。
「ようやく楽しめるだけの肝が据わったという事ですね?」
「まあな。もうサイは投げられたんだ。あとは………己の運を信じるだけだ」
「そうですね………おや?誰かがあの角に向かって行ってますね?」
その言葉に、村雨は視線をあの角に向けた。
その人物は、その角を挟んで二人とは反対側にいた。その性別は、女性。
遠目にも分る派手な格好をしており、いかにもこれから遊びにいくといった感じを受ける。
それを見た御門は、村雨に告げた。
「どうやら私の勝ちのようですね?」
「そいつはどうかな?………勝負ってのは結果が出るまで分らねーモンだぜ?」
「果して、そうでしょうか?」
そして、その女性は角へ向かっていく………。
『曲がるはずがない。オレが、あの角を最初に通るのが野郎だって方に賭けたんだからな………』
それから10秒後。その女性は角の前にさしかかり………そのまま通り過ぎた。
「よぉし………」
「フッ………悪運の強い男ですね」
「この程度の逆境………なんでもねーぜ」
そして、それから幾人もの通行人がその道を通った。
しかし、誰一人としてその角を曲がろうとはしなかったのであった。
御門は村雨の運を過小評価していたのかも知れない。
村雨の天運という名の光りは………逆境の陥った時、いつもにも増して輝いていたのだ。
そして、その輝きは、ついに閃光と化したのだった。
「ん?」
「どうしました?」
「勝負に水を差す様で悪いが、どうやら電話らしいな………」
そして、御門から少し離れた場所にいくと、その角から視線を離さないままに、その電話に出た。
その電話がどのような内容であったのか………。
数分後、御門の前に戻った村雨は、不意に尋ねたのだった。
「そういえば、まだだったな」
「なにがですか?」
「オレが負けた時にどんな事になるのか、聞いてなかったと思ってな」
「そう言えば、それを決めてなかったですね」
「どうするんだ?」
「まあ、別に何でも良いのですが………禁煙でもしてもらいましょう」
「禁煙ねえ」
「不満ですか?」
「まあ、何でも良いけどよ………」
そう答えた村雨は、再びその角に視線を向けたのだった。
それから20分くらい後であろうか………。ついに、その角から、誰かが現われた。
その人物は、かなり派手な格好をしていた。性別は、どう見ても女性。
村雨の悪運も………ついに尽きたのかも知れない。
それを見た御門は満足そうに告げた。
「勝負あり、ですね」
「………」
村雨は御門に背を向けた。そして、その肩は僅かに震えている。泣いているのであろうか?
それを見た御門は、珍しい物でも見るかのようにして告げた。
「そんなに悔しいですか?」
「………クッ………」
「まあ、どうしてもと言うのなら、もう一勝負………」
「クッ………クックックッ………ハッハッハッハッハッ!」
そう御門の言葉に耐え切れないようにして大笑いし始めた村雨に、御門は怪訝そうな顔を向けたのだった。
「………なにが可笑しいのです?」
「いやー………なかなか面白れえ趣向だったぜ?オメエもなかなかに質が悪いよな?」
そう御門の肩をバンバン叩きながら、さぞ面白そうに告げた村雨に、御門も悪戯がばれた時のような表情で答えた。
「やれやれ………バレてしまいましたか」
「さっきの電話は、藤咲からでな。いつもの3人で遊んでいるんだけど、オレも一緒しないか?って誘われたんだ。
あいつが3人で遊んでるって言ったら、芙蓉も一緒って事だ。ったく………すっかり騙されたぜ」
「まあ、バレてしまったのは仕方ありませんね。しかし、この勝負は私の勝ちですよ?約束通り、禁煙してもらいます」
おそらくは、それが御門の目的であったのであろう。しかし、村雨はその言葉に問いで答えた。
「そいつはどうかな?言っただろ?勝負は最後まで分らないってよ?」
「どういう意味です?」
「あいつは………果して女って言い切って良いのかねえ?」
そう言われて、御門はあらためて視線をその角から現われた人物に向けた。
そして、その人物が、迷いもなく自分達に向かって歩いてくるのを見て………。
ビシィッ!!
そんな音が聞こえてきそうな程、見事に固まった。
「晴明さま?どうなさったのです?」
そう滅多見れないであろう固まった御門を前にして告げたのは………。
これまた滅多に見れないであろう………ちょード派手な格好をした芙蓉だった。
元々、モデル並の見事な体型をした芙蓉である。どんな格好でも、それなりに似合ってしまうのであろう。
その格好は、見事なまでに似合っていた。ただし、その服を選んだのは、あの藤咲である。
しかも、村雨から『金はオレが払うから、御門のヤツがブッ飛ぶような服を選んでやってくれ』と頼まれての事である。
それがどれほど凄い格好なのかは………考えるまでもないであろう。
「ふ………芙蓉?」
「はい。なんでしょうか?」
「な………なな………な、なんて格好を………」
「藤咲様達から、どうしてもこの服で行って欲しいと頼まれまして………」
その言葉で見当がついたのか………顔を怒りで赤くした御門は、横で腹を抱えて笑っている村雨を怒鳴りつけた。
「村雨ぇ!!」
「そんなに怒んなって。テメエだってこんだけ洒落にならない事してくれたんだぜ?ちょっとした仕返しってヤツさ。
まあ、そういう訳で、この勝負は引分けだ。大体、式神に性別もクソもねーだろ?
オレはコイツと一緒に遊びに行かせてもらうからよ?じゃあな」
そう言い残して、村雨はそのやたらとド派手な格好をした芙蓉の肩を抱いて去って行く。
その先には、これまた笑っている藤咲と高見沢。そして、龍麻と京一の姿もあった。
どうやら最後に罠にはまったのは、御門の方であったらしい。
そして、茫然自失となった御門は、いつまでもそこで佇んでいたのだった………。
追記。
その時の滅多に見れない御門の顔の写真が仲間内で飛ぶように売れたとは、某新聞部の部長さんの弁である。
<終わり>
ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。
御意見、御感想、叱咤、なんでも結構ですので、メールや感想を頂けると幸いです。