Character profile.
LISA(HUnewearl)/ Lv.8 / ID:ORAN
タイレル提督から、ラグオル地表の調査を依頼されたハンター。
ハンターにしては小柄ながら、秘めた魔力は並ではない。
まさに魔法剣士というハニュエールの特徴を表しているだろう。
ちなみに、「チビ」とか「ガキ」と言われると、キレる。
Abel (Humar) / Lv.4 / ID:SKYLY
リサ曰く「へっぽこハンター」。
本編で大いにへっぽこぶりを発揮していたアッシュと親友である辺りに、
そのへっぽこぶりが垣間見えているのかも知れない。
ちなみに、本作の主人公である。
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アイツは、いつもオレの側にいたし、オレもアイツの側にいた。
何時だってオレ達は二人で居たし、それがオレ達にとっては当たり前のことだった。
それが、当たり前だって事にすら、オレは気がついていなかったんだ。
it's always in your side. write by 雪乃丞.
自分が何をしているのかわからなくなる時って………ないか?
例えば、何のために自分が必死なっているのか、それが分からないときなんかが………。
そう、ちょうど今のオレのような状態なんかが、そうだ。
「もうヘバったのか?」
地面の上で寝転がって、肩で息をしていた俺を見下ろしながら、そう告げる耳の長げーガキんちょ………。
げし。
「グェ!」
思い切り腰のあたりを踏みつけられたオレは、思わず悶絶した。
「こ、この野郎………人が動けないのを良いことに………」
そんなオレの苦情が聞こえているのか、聞こえてないのか。
「誰がチビだと?」
そうニューマンらしくない白い顔に、皮肉げに歪んだ笑みを浮かべて、アイツは………リサは笑っていた。
リサがこんな顔をする時は、大抵不愉快な想いをしているときだ。間違いなく、怒ってる。
それは、神経質そうにピクピク動いている、あのニューマン特有の長い耳を見るまでもない。
「誰も、んな事いってねーだろうがよ………」
「だが、考えた。………違うか?」
「ま、まあ、似たようなことなら」
どげし。
「うげっ!」
ま、またしても………しかも同じ場所を蹴りやがった。
「同罪だ、ばか者」
「人が疲れて動けなくなってるのに、よくそんな真似をへーきで………」
「お前が訓練不足なだけだ。私に非はない」
「蹴っただろうが!おもいっきり!」
「違うな」
「なんだと?」
「蹴ったのは二回目だけだ。一回目は踏みつけただけだ」
なおわるいわ!
「だいたい、アベル。お前は、私よりも先に、プロのハンター試験に受かったんじゃかったのか?」
「ま、まあ、一応わ」
もう七年から8年くらい前の事だが、一応は受かった。
でも、それからすぐに、このパイアニア2へ乗り込んで、ラグオルへ向かったんだ。
その間、大した実戦らしい実戦は経験してない。
だけど………同じ、条件のリサは、いつのまにかオレより強くなってたんだよな………。
「それならば、これくらい受け止めるなり、避けてみせろ………情けない」
「………うっせぇ」
どーせ、俺はなまっちょろいヤツだよ。
「分かっているのなら、少しは努力というものをしてみせろ。
そんな事では、いつまでたっても、他の連中に追いつけないぞ?」
いつもかつも訓練訓練って、生真面目にやってるお前とは違うんだよ。
………って、威張って言うようなこっちゃねーか………。
まあ、オレが訓練不足だってのは、自分でも分かってるし………認めるけどよ。
「だったら、さっさと立ち上がれ。お前の訓練にいつまでも付き合っていられるほど、私はヒマではない」
そう苦笑とともに差し出された細っこいリサの腕を掴むと、おれは立ち上がった。
「しっかし、その体の何処に、あれだけの力があるんだろうな?」
「まだ言うか、お前は」
「いや、そういう意味じゃなくて………」
そう耳の付け根辺りを赤くして怒るリサを何とかなだめると、更にオレは言葉を続けた。
「そのー………なんだ、その小さい体の何処から、あれだけの力が沸いて出てるんだ?」
はっきりいって、リサは子供みたいな体型をしてる。
でも歳はオレと殆ど同じ。確か………一つか二つは年上だったはずだ。
もっとも、ハンターになったのはオレの方が先だから、一応は、オレの方が先輩という事になるのだが。
「私はニューマンだ。力に頼るだけのヒューマンには出来ない戦い方というものがある」
「ニューマンの戦い方?」
「そうだ。ニューマンは力に劣り、魔力に秀でている種族だ。おのずと、ヒューマンとは戦い方も変わる」
「つまり、魔法の攻撃を使いながら戦うって事か?」
「私は、フォース………フォニュエールではない。ハンター………ハニュエールだ。
ヒューマンよりは高いとはいえ、魔力はそれほど強いともいえない」
「じゃあ、どんな戦い方があるってんだ?」
「ハニュエールの戦い方は、力よりもスピードを重視する。だからこそ、我らハニュエールはダガーを好む」
そう告げるリサは、ダガーを………ハニュエールが得意とする武器を手にしていた。
確かに、リサくらいの速度があれば、あの手にした小剣で相手を切り刻むのも容易いのかも知れない。
「相手の攻撃を受け止めるのではなく、避ける。素早く攻撃を仕掛けて、離れる。
そうやって、攻撃を受けずに相手を叩いていれば、いつかは勝てる。
実戦するのは、なかなかに難しいが、ニューマンなら子供でも知ってる道理だ」
そう良いながら、リサはダガーによる攻撃………素振りを見せる。
その動きは、オレ達ヒューマンのハンター、ヒューマーの力任せの攻撃とは些か違った。
どこかどう違うかまでは、まだ分からない。でも、あの動きはハニュエールだからこそ、出来る動作なのだろう。
少なくとも、同じ武器を使っても、あの動きはオレには出来そうにない。
「つまりは、そういう事だ。先程の問いの答えになったか?」
「まあな。でも、それにしたって………」
オレは、そのスピードが信条のリサの蹴りで、吹っ飛ばされたんだけど………。
「お前が私並の強さを身につければ、おのずと力押しが通じなくなる」
「そういうモンなのか?」
「そういうモノだ」
「するってーと………」
つまり、オレはぜんぜん弱いって言われてんだな?
「そういう事になるな」
そうニヤリと笑った顔が、憎らしいのなんのって………。
「事実だ」
ほっとけ!
「とにかく、ニューマンにはニューマンの戦い方があるという事だ。覚えておくといい」
そう告げるリサは確かにニューマン特有の長い耳はあるけれど………。
「………なんだ?」
「いや、大した事じゃないんだ」
そう、大した事じゃないんだけど………。
その白い体はハニュエールというよりも………フォニュエールっぽく見えるのは何故だろう?
フォニュエール特有の派手なメイクをして、フォースの格好をさせたら………以外と似合いそうな気がする。
多分だけど、フォニュエールと見分けがつかないんじゃないか?
そういや、リサってハンター試験を受けるときの窓口で、保護者の同意書をもってこいとか言われたんだっけな。
「うるさい」
ガシっ!
「うわ!」
咄嗟によけたけど、今のダガーのツッコミに当たってたら………シャレにならねーって。
「ほう、流石に避けたか」
「ったりめーた!いきりなり何しやがる!」
「自業自得だ」
「あんだと?」
「よもや、私が子供扱いされるを嫌う事を何よりも嫌う事………忘れたわけではあるまいな?」
忘れるわけねーって。
「なら、なぜ、先程のような失敬な事ばかり考えるのだ?」
「それを言うなら、なんでさっきから、俺の考えていることが分かるんだよ?」
「お前ほど表情で感情や思考が読めるヤツも珍しい」
つまり………口以上に雄弁な顔ってか?
「そういう事だ」
………また読みやがったか。そんなに読みやすいモンなのか?
「何年来のつき合いだと思っている?………お前は特別だ」
「つまり………お前の耳みたいなモンか?」
実は、オレも、リサの喜怒哀楽の感情の動きを読める。
何を隠そう、耳を見ていると大体、どんな感情でいるか分かるんだ。
もっとも、リサ以外のニューマンの感情は読めないけれど。
「私の耳の動きから感情を読めるような変態は、お前くらいのものだ」
なんでそこで「伊達に長いこと親友をやってないな」くらいはいえないかねー。
「不満があるなら、私から一本とるのだな。それが出来れば謝罪なり何なりしてやろう」
そう何処となく不適で不遜な笑みを浮かべるリサの手に、薄ぼんやりとした光の刃が宿る。
フォトン………光の刃をもった小剣、ダガー。リサが得意とする武器だ。
無論、オレだって、それくらいは扱える。いくらへっぽこ剣士でも、これでも一応は、ハンターだからな。
「その言葉、後悔すんなよ」
「その言葉は、私から一本でもとってから言うんだな」
そして、幾度目かになるフォトンの刃の触れあう音が鳴り、オレの手にしたセイバーが唸りを上げた。
いくら手加減してるとはいえ、真剣を使った訓練に怪我はつきもの………。
「お大事に」
そう告げられる声を背後に聞きながら、メディカルセンターから出てきたオレに、見知った顔のヤツが声をかけてきた。
「よう」
そいつは、オレと同じヒューマー。名をアッシュ・カナンといった。
何を隠そう、オレの後輩というヤツらしい。
まあ、何人いるんだか分からないくらいにいっぱい居るハンターの一人って訳さ。
同じヒューマーでレベルが近い事もあってか、結構仲は良い方だと思う。
「またか?」
「まあな。リサのヤツも手加減ってモンを知らねえぇから………」
訓練の後は、大抵傷だらけ。これでレスタが使えなかったらと思うと、ゾッとする。
対してリサはというと………単に、息が荒くなっただけ。………この差はなんだ?
「毎度の事ながら、大変そうだな?」
「そう思うなら代わってくれよ」
ほんと、マジにかわってほしい。
「ははは………それは出来ない相談だ」
アッシュ………顔がひきつってるぞ。
「友達甲斐のないヤツだな」
「そう言うなって。とっておきの情報をやるからさ」
「そいつぁ嬉しいね。………で?」
そう、その情報とやらを促したオレに、アッシュは顎をシャクって答えた。
「じゃあ、行こうか」
「行くって、何処に?」
「おいおい、アベル。情報をタダで貰おうって言うのか?」
踏んだり蹴ったりとは、まさに、この事だろう。
「一杯、おごれってか?」
「まあね」
えーっと………今の所持金はっと………。
「………450メセタ」
そういや、今朝、リサのヤツに無理矢理レスタのディスク買わされて、散財したばっかりだったっけか。
「貸しにしといてやるさ」
ちくしょー………なんて間の悪い話しなんだ。
「これで、下らない話しだったら承知しないからな」
「多分、面白い話しになると思うぜ?」
「それなら良いけどな」
そう溜め息混じりに答えると、オレとアッシュは居住区へと続く通路へと踏み出した。
ヒマを持て余したハンター達がたむろするバーの片隅で、オレ達はグラスを合わせた。
「………で?その、情報ってのは、ナンだ?」
「せっかちなヤツだな」
「いいから聞かせてくれって」
「そんなに大した事じゃないんだけど………」
そう前置きすると、アッシュは小さな声で話し始めた。
「何でも、総督府から直に依頼を受けたハンターが居るんだってさ」
「総督府って………政府からの依頼って事か?」
「らしいよ?」
いくらこのパイオニア2に軍人が少ないからといっても………正直、信じられない。
あのプライドだけは並以上に高い軍人達が、日頃目の敵にしているオレ達ハンターに頭を下げるだなんて………。
「マジな話しなのかよ?」
「マジらしいよ?誰が依頼を受けたのかまでは知らないけどさ」
「………何があったんだろうな?」
「我らが英雄、リコの関係かもな」
「リコが?」
オレの不審げな声に、周囲のヤツラの視線が集まるのを感じた。
リコ………赤い輪のリコ。もはや生きた伝説と化した凄腕のハンター。
その名前は、ハンターズギルドに所属するハンター達なら、知らないヤツはいないだろう。
いや、ハンターでなくとも、この船団に乗っているヤツなら、誰でも知ってる。
下手なアイドルなど足下にも及ばない美貌と、絶対的な………いや、恐怖すらも感じさせる強さをもつ、我らが英雄。
それが、ハンターズギルドの頂点に位置するハンターの名のもつ力だったのだろう。
そんな視線に気が付いているのか、アッシュは僅かに声を低めて、オレに告げた。
「これって、未確認の情報なんだけどさ………リコの本名、リコ・タイレルって名前らしいぜ?」
「タイレル?タイレルっていたら………まさか………」
「ああ。このパイオニア2船団のトップ、タイレル総督の娘なんだって………」
「つまり、アレか?親が子供を探してくれって頼んだって事か?」
「だから、総督府からの依頼を受けたって噂になったのかも知れないな」
その話しが本当だとすると、確かにうなづけるものがある。
生きた伝説、凄腕ハンターのリコは、パイオニア1に乗っていたらしい。
そこに起きた、一週間くらい前のラグオル地表で起きた事故………。
アレ以来、リコは消息を断っているのだ。
いや、パイオニア1の乗員全員が消息を断ってしまっている。
いったい、下(地表)で何があったのやら………。
「どうだ?おもしろい話しだろ?」
「親が、子を心配しないはずがない、か。確かに、それならハンターズに依頼が来たって理由になるよな」
なにせ、政府の対応が決まるのを待っているような時間はないのだから。
「あと、もーひとつ。コレ、気を付けろって事らしいんだけど………」
「どんな話しなんだ?」
「ラグオルに、セントラルドームってあるだろ?」
「ああ、あのパイアニア1の連中がつくったとかいう建物だろ?」
「アレに向かった連中が、軒並み帰ってきてないんだってさ」
「オレも、一回だけだけど下に降りた事あるんだけどよ………アリァシャレにならねーわ」
………ヒルデベアだったっけ?マジで、食われるかと思ったもんな………。
「下、滅茶苦茶キツイぜ」
「………そうなのか?」
「あんまり奥までいくと帰るのが大変だと思うしな。………お互い、しぶとく生き伸びようぜ」
そう溜め息混じりに告げると、オレ達は、手にしたままになっていた酒杯を合わせた。
脳裏によぎるのは、あの日アッシュと交わした会話。
ここは、ラグオル。オレのようなへっぽこハンターには、まさに地獄の一丁目ってな。
「………レスタ買っといて良かったぜ」
死にかけること、はや十数回。もってきた回復薬は、もう残り少ない。
回復薬を温存して、今はテクニック………まあ、魔法みたいなモンで傷を回復させているって訳だ。
もし、レスタが使えなかったらと思うと………。
「アイツの言う事に間違いはなかったってか」
なんでオレがラグオルに降りてきているかというと、アッシュの救助を依頼されたからだ。
その依頼は、キリークっていう腕利きのハンターが一緒だったお陰もあって、何の問題もなく終了した。
きっと、アッシュの叔父さんとかいってた人(依頼主だ)も、アッシュを絶対に助けたいって思ってたんだろうな。
まあ、そんな訳で、あとはパイアニア2に帰還するだけとなったオレだったのだが………。
『アベル、なんでココにいるんだ?リサと一緒じゃなかったのか?』
あの一言が、オレの「用事が済んだら、とっとと帰ろう」という気持ちに、待ったをかけた。
『てっきり一緒だと思ってたんだけど………一人だったんだな』
そう一人納得しているらしいアッシュの言葉を聞いて、オレは内心焦りを感じていた。
『いや、一人だった。多分だけど、リサ、一人で降りたんだと思うぜ?』
………リサが一人で、ラグオルに降りていた?
『セントラルドームに向かってたんだと思う。まあ、大抵のハンターは、最初にソコを目指すんだけどさ』
………アッシュは、数日前、何といっていた?
『アレに向かった連中が、軒並み帰ってきてないんだってさ』
アッシュがリサを見たといっていた時間から、半日くらいが経過している。
一旦パイオニア2に戻って、リサがまだ帰ってきていない事を確認したオレは、準備を整えると再びラグオルへと降り立った。
幸いといおうか、何といおうか………アッシュの救出を果たしたオレには、結構な額の謝礼が支払われていたんだ。
そのお金でモノメイトを初めとする回復薬などを買い込み、オレはリサを探し始めた。
『何でも、総督府から直に依頼を受けたハンターが居るんだってさ』
まさかとは思うのだが………どうにも、アッシュから聞いた話しが、頭から離れない。
なんで、リサはこんな場所に一人で降りたんだろう?
前回同様、リコの足跡というか………メッセージは至る所に残されていた。
そして、森の至る所にのこる、戦闘の跡。
その中には、明らかにダガーによるものだと思われる傷跡の残る死体もあった。
「………リサ………」
親友だと思っていたのに………。いや、今でも、リサは一番の親友だ。
ハンターが依頼を受けると、そこには守秘義務………依頼主の秘密を守る必要が生まれる。
リサはおそらく一人で依頼を受けたのだろう。
もしかすると、他にも依頼を受けているハンターは居るかも知れないが。でも………。
「オレにまで黙っていなきゃいけない話しだったのかよ」
確かに、今のオレは、リサにとって足手まといにしかならないかも知れない。
でも。それでも、オレは一人残されるなんてご免だった。
なんで一緒に連れていってくれなかったんだよ………。
『分かっているのなら、少しは努力というものをしてみせろ。
そんな事では、いつまでたっても、他の連中に追いつけないぞ?』
………そうだったな。お前は、いつだって、オレに努力しろって言ってくれてたもんな。
それを聞かなかったオレに、置いて行かれたからって、怒る権利なんてないのかもな。
不意に緩んだ意志のせいか、オレは、ごついブーマー種(見たことないヤツ)の一撃を受けて吹き飛ばされた。
混濁する視界。その向こうに、降り注ぐ雨を体に受けながら、ごついブーマーどもが迫る。
「くそ、ヒルデベアまで………」
脳の奥から、痺れにも似た何かが広がっていく………。
「もう少しで、セントラルドームなのに………」
………もう、駄目、なのか?………あきらめちまうのか?
「………イヤだ」
リサにも会えないままに、こんな場所で、こんな化け物どものエサになるつもりかよ?
「………リサに会いたい………」
『だったら、さっさと立ち上がれ。お前の訓練にいつまでも付き合っていられるほど、私はヒマではない』
そうだったよな。リサ、お前は待ってくれないんだったな。
「こんな場所で………死んでたまるか!」
オレは、なけなしの精神力を振り絞ると、レスタを使いながら立ち上がる。
「リサを、一人で行かせられるか!」
手にしたセイバーの感触が、ここまで心強く感じた事はなかった。
破壊されたセントラルドームへの入り口。
それは、余りにも現実味を無くした光景だったのかも知れない。
「おいおい、これからどうしろってんだよ」
そんな途方に暮れたオレに助言をくれたのは、リコだった。
『他の道を探してみて』
他の道、か。リコがこれを残したままにしてあるって事は、他に道があるって事だよな。
「となると………アレが臭いか」
そう横に視線を動かしたオレの目に、軍用なのだろう、随分と大きなサイズの転送装置があった。
「問題は、なんでこんなに大きい転送装置があるかってことだよな」
人を転送するだけなら、こんな大きなサイズのものは必要ない。
でも、このサイズを必要とするモノが、この先にあるとしたら?
たとえば………軍用の機動兵器を使わなきゃいけないような大きな化け物が居たとか………。
そいつが死んでいるのなら良いが………そうそう上手くはいかないだろう。
ここは、生きていると考えておいた方が良いと思う。
「そういや、大物とか真打ちっていうのは、いつだって最後に出てくるんだったよな」
自分の言葉で、思わずぞっとなる。
しかも、ご丁寧に、この転送装置は一方通行だった。
つい数時間前まで一緒だったキリークの言葉を信じるなら、安全装置が動いている間は、他の転送装置も使えないはずだ。
つまり………ソイツをどうにかしない限り、帰ってはこれないし、出ていく事もできない。
「………まあ、考えてみれば、当たり前か」
この転送装置の向こうに居るヤツが、これを通ってきたらエライことになるだろうしな。
でも、それだけ用意周到に準備しないと手出しが出来ないよーなヤツが居るというのは確かな事で。
正直、オレの手におえるかどうか………勝算は、かなり低いだろう。
「………さて、どうする?」
そう自分に問いかける。だが、オレの答えは、もう決まっている。
この転送装置は、もう動いていたんだ。つまり、リサは、この先に進んだって事さ。
………ここで迷ってる時間はないはずだぜ?
「今いくぜ、リサ!」
オレは、迷わず足を踏み入れた。
アイツは、いつもオレの側にいたし、オレもアイツの側にいた。
何時だってオレ達は二人で居たし、それがオレ達にとっては当たり前のことだった。
それが、当たり前だって事にすら、オレは気がついていなかったんだ。
でも、今は分かる。リサと一緒居たいって思う自分が、ここに居る。
臆病で、へっぽこで、頼りない………そんな自分に別れを告げて。
オレは、リサの隣に立ちたい。そして、いつか追い抜いて………アイツを守れるだけの力を手に入れたい。
それが、オレの願いの全てだった。
「………ここは………」
そこは、やたらと広いドームの中だった。
むせ返るような暑い熱気に満ちた………そんな空間。
オレは、地面に幾つも出来た溶岩だまりを避けながら、ドームの奥へと進んでいった。
「リサ?」
真っ黒に焼けて、一際巨大な溶岩だまりに沈んでいく巨大な生き物の影の向こうに、リサは居た。
「リサ!」
だけど………その地面に横たわったリサの姿は、余りに酷い状態だった。
「リサ!しっかりしろ、リサ!」
全身に大やけどを負ったリサは、それでも満足そうな笑みを浮かべていた。
「………アベルなのか?」
「そうだ、オレだ!リサ!しっかりしろ!」
「………情けない事だ」
その声には、諦めしかなく。
「………リサ?」
「リコの消息を掴んでやろうって息巻いて………あげくに、この様だ」
「………何を………」
「………アベル。一人か?」
「あ、ああ」
「よく一人で………ここまで、これたな?」
「必死だったんだ。お前を一人にしておきたくなくて………気が付いたら、ここまで来てた」
「強く………なったんだな」
そう、意識が朦朧となっているらしいリサに答えながら、焼けただれた体の状態を、スーツに装着された機械で調べる。
結果は………絶望的だった。いくら、人並み外れた体力をもつハンターでも、もう長くない。
オレは、それを信じたくなくて。何度も何度も、繰り返しチェックした。
でも………結果は変わらない。変わるはずがないんだ。
「………もう、駄目なんだな?」
「平気にきまってる。こんな事で………死ぬはずないじゃないか」
………死なないでくれ、リサ。
「そうか」
オレとリサの間には、言葉はいらないんだったっけか。
「選別だ。もっていけ」
そう言って差し出されたのは、リサが大事に育ててきたマグだった。
………オレの肩の上に居る、何の変哲もないマグとは明らかに違う、大事に育てられてたらしいマグ。
羽のように二対に別れた………力強い姿をしていたマグだった。
「ヴァラーハだ。………ここまで育てるのに、5年かかった。羽のような形をしているのが自慢だ」
そう無理に微笑みを浮かべるリサの姿が痛々しくて。オレは、自分の頬を流れる涙を自覚していなかった。
「そんな顔を、するな。………いつでも、私は、お前の共に居る。………死ぬな、よ………」
その言葉を最後に、リサの小さな体から、力が、抜けた。
「………リサ………リサァアアアァァァァーーーーー!!!」
なぜ………オレは、失ってからでないと大事なモノに気が付けなかったのだろう。
背中で揺れるヴァラーハから与えられる驚異的な力を得たオレにとって、帰り道は苦もなかった。
「………以上の経緯をもって、ハンター・リサの死亡を確認。
セントラルドーム脇の軍のものだと思われる転送装置の向こうに巣くっていた巨大生物と相打ちに終わったようです。
遺体は、勝手ながら………ラグオルの大地に埋葬させてもらいました。報告は以上です」
オレは、タイレル提督の前で、そう話しを締めくくった。
「………済まない」
それは、おそらくリサだけでなく、オレにも向かってかけられた言葉だったのかも知れない。
「タイレル総督、お願いがあります」
「………なんだね?」
「私に、依頼してください」
それは、オレが、背のヴァラーハに………リサに誓った事。
「君に、ハンターリサと同じ依頼をしろと言うのかね?」
「はい。私は………」
握りしめた拳の中で、何かが軋みを上げた。
「私は、未だ弱く………任務の達成には、並々ならない困難がまっています。
しかし………私は、リサの………彼女の意志を継ぎたいのです。
おねがいです、総督。私に、リサと同じ事を命じて下さい」
その願いに、タイレル総督は難色を示した。
「一人では、ハンターリサの二の舞になりかねん」
「いいえ、一人ではありません」
「………誰か、他に、パートナーがいるのかね?」
………そうさ、オレは一人じゃない。
「はい。私には、パートナーが居ます」
「………そうか。それならば良いだろう。ハンターアベル。
君には、ラグオル地表におけるパイオニア1の乗員の行方を探してもらいたい。
それと平行して、パイオニア1の爆発事故の原因の究明と、その後に起こった異常事態についても調査をして欲しい」
全ての謎は、地表に………そして、セントラルドームの向こうにあるのかも知れない。
「了解しました」
オレは、タイレル提督に背を向けながら、言葉を続ける。
「………リコ・タイレルの行方も併せて調査します」
そんなオレに、タイレル提督は、思い出したかのように尋ねてきた。
「そういえば、君のパートナーというのは、誰なのかね?」
そんなのは、決まってる。
「ハンター・リサ。………彼女は、今も、私と共にあります」
そう、彼女は………ヴァラーハと共に、永遠に側に居る。
<おわり>